第3話

少年の身なりはいつの間にか整えられ、その身には美しい衣をまとっていました。

しかしそれだけではありません。 少年はいつの間にか小さな部屋に入れられていました。

少年はとても不安でした。 

それでもある限りの記憶を手繰り寄せました。

「たしかアイツに助けられて...」

脳みそが、ズキズキと痛みます。


音ひとつ立てずに入り口が開きました。

でっぷりと肥えた男が、ザイデルの案内ではいってきます。

男の顔には気持ち悪い笑みが浮かんでいました。

壁を向いてベッドに座っていた少年が気配を感じて振り向くが早いか

肥えた男に押し倒されてしまいました。

刹那、閃光が走りいつかと同じ金色の鳥が少年の目の前にありました。


――求める者に力を


どこからともなく小さく、しかし響く声が聞こえてきました。

大地が揺れ、風は唸り、水は暴れだしました。


――汝の求むままに。


少年は力がみなぎるのを感じました。

そして、ひどく興奮していました。


数秒後、そこはまさに地獄絵図となっていました。

そのときこそ弱者であった少年が一方的に喰らい、屠るものになった瞬間でした。

あんなものにはなりたくないと、少年が最も嫌っていたものに。


求めていたはずなのにどこか満たされない少年は...




爽やかな風がふきました。

小高い丘に手を合わせたその人は、長い長い路を進んでゆきました。



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幸福を知らなければ悲しみは感じない。 櫻庭 春彦 @dawbrock

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