第7話 退屈なテスト

「ふう、今日は、めっちゃ早いやん!しかも、朝起きるなんて、何かあったんやろ?」


私は、自分の机にカバンを置きながら、琴実を見た。

琴実は、顔をにやつかせて私に、声をかけてきた。


「おはよ、琴実。別に何も無いわ」

私は、自分の椅子に座って、琴実に素っ気なく返事をする。


「ほんまに? いつもテストの日って、ふうは暗いのに、今日はすごい明るいやん?」

「え、そうなんかなぁ・・・ 自分ではよう分からへん・・・」

そうなんかな? そんなにいつもと違うんかな?


「そうそう、琴美(ことみ)。私もおかしいなぁって思ってん」

美希(みき)は腕を組んで、琴実と一緒のことを言う。

「二人の思い違いやって。そんな事ないって。いつもと変わらずふつうやで」

「柴犬と会ったんやと思ったんやけどな」

・・・美希、するどい!

でも、昨日、笑われたから、言わへんからな。


「それよりな、ちゃんと勉強してきたん? 」

琴実が、私に聞いてきた。それを聞かれると、つらいんやけど・・・


私は、無言で首を横に振った。

「ホンマに補習あんで・・・」

「えっ! 嘘やん?それ、やばいやん」

琴実が言った言葉に、なぜか美希が驚く。


「補習か・・・まぁ、仕方ないわなぁ」

私は、一人、ため息をつきながら、天井に向かってつぶやいた。


「のんきですなぁ、あんたは」

美希が、あきれた顔で言った。

「昔からやわ、ふうがのんきなんわ」

琴実が補足する。


昔から、したくない事に興味がわかへんのは、ほんまやけど。

補習受けなくちゃならへんねやったら、受けたらええやん。なるようになるわ。


でも、言われっぱなしも嫌なんで、反論してみた。

「・・・琴実はどうなん? 私の事言えへんのとちゃうの? 」

「ふふ~ん!ふうとは違うのだよ、ふうとは」

確かに!琴実は昔から、ちゃっかりしてんもんなぁ。って、心の中で、つぶやいた。


キーンコーン、カーンコーンと、開始のチャイムが鳴り響く。

あまり好きになれへんこの音。

だって、時間に縛られてる感じがするし、そもそも時間の感じ方って人それぞれ違うわけやから

それを一緒にしようとするからおかしくなんねんって!

・・・と、力説しても、ただの、社会不適合者だよな、私。


そんな私の思いを無視してガラッと、扉が開いて、ピシャッと扉が閉まる・・・

で、とりあえず、先生が入ってきて、一番前の列の人に、テストを渡すん。

そして、前の人から順番に、後ろに渡して・・・って、そんな説明いらんか。


私は、一人で、テストの様子を実況していた。

なんでかって言うと、暇なもんで・・・テストって。

だって、分からへんから、名前書いて、考えるフリして、窓の外眺めて、そして、終わるねん。テストが。

課題は、美希がやってくれるし、体育祭とか学園祭とかは、琴実が教えてくれるから、なんにも考えなくてもいい生活。

こんなんでええの? って思うかもしれへんけど、こんなのがええの!


テストはとっても平穏無事に終わった。

「ふわぁ」って、大きくあくびをした私の目に、教室の窓から、青い空、白い雲が映った。

まだまだ寒いけど、少しずつ暖かくなってきて、もう少しで春なんやなって思う。

でも、まだまだ寒いわ。

寒い日の空も、澄み切っていて、好きやねん。夜もええねんで、星が綺麗に見えるもん。


「お疲れ~、ふう。テスト終わったやん」

「うん、お疲れ、琴実」

「それよりな、今日、帰りハンバーガーでも食べて帰らへん? 」

「別に予定も無いからええねん・・・けど、マ○ド?」

「ちゃうで!あの、おしゃれそうなとこあるやん?」

「ああ~!入ったことないわ」

「じゃあ、行こうや?」

「でも、琴実、大丈夫なん? 」

「あ、バイト?大丈夫やで、今日は、休みやから」

「分かった、じゃあ行こ!でも、美希どないすんのかな? 」

「美希は、今日はあかんねんって。よく分からへんけど、今日はどっかに行くみたいやで」

「そういや、謎が多いよなぁ、美希って」

美希とは、高校に入ってからの友達やから、中学生の時に、何してたとか全く知らへん。

謎が多いねん。

そんな噂をしてたら、美希がやって来た。


「ふう、琴実。ごめん!今日は行かなあかん予定が入ってしもてるんやわ。明日やったら行けるから」

と、両手を合わして、謝ってきた。

「全然気にしてへんで。明日でもええよ」って、私が美希に言った。

「そうゆうとこ、ふうの事好きやで!」

と、美希が抱きついてきた。

・・・いちおう言っとくけど、美希は美人やけど、そんな趣味は無いで。


「美希、なんでそんなに謝ってくんの? 」

私は美希がそこまで言ってくるのが分からなかった。


美希が、目をきょとんとして、見てきた。

「だって、この間、テスト終わったら、フルーツバイキング行こって言ってたやん。せやから、明日にせえへん? 」

だから謝ってたんや、と、私は手を軽く叩いた。


「・・・美希。ふうに、そんな事ゆうてもあかんって。三歩を歩けば、忘れんねんから」って、琴実が言った。

まぁ、そやねんけど、そやねんけども、ところで、今日行くって言ってたっけ??


「・・・あやまったことが損でしたわ」

私の疑問は置き去りにされた。

ほんま、二人して、私のことバカにしてんちゃうん? と、ふくれっ面してるけど、二人とも気付いてくれへん・・・。

「まあ、そうゆうことやから、明日行こな~。じゃあね~、また明日ね~」

と、言って、美希は手を振りながら、去って行った。


「じゃあ、帰ろっか」と、琴実と私も、学校を後にした。


ただ、琴美がかばんを教室に取りに行って欲しいと言われたんやけど、なんでやったんやろなぁ?

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風の花 しばし相見る 神の木を shiba @fu_shiba

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