面影
@oiteke
面影
なにしろ、水棲の記憶が
抜けない連中だから
歩くところといえば
川べり、谷底、池っぷち
食うものといえば
水草、水ゴケ、タニシ、ドジョウ
そんなことでは力が出まい
昔はもっと
ぜいたくに食ってたはずだ
と言ってやっても
へらへら笑って
とても聞くものではない
ひとの親切なんか
うるさいだけで
いいから、爺さん、ほっといてくれ
と言われたら
こちらとしても陰険な目つきで見返して
しなびた干し肉をかじり続けるだけだが
そうはいっても、こちらにも
かすかな記憶はあって
な!
と逆に問われたら
うろたえないわけではない
帰ろうぜ!
と誘われたら
どうなることか
こいつらと一緒に
水棲にもどる道をたずねて
旅に出るのだろうか
落日に──ああ、血の色だよ──染まる海辺で
目を尖らせて睨み合うおれたちは
たがいに
鮫だった昔の面影を
読み取ろうと
いや、すでに
読み取ったのだが
面影 @oiteke
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます