第6話

マコトは淡々と陳列された品をカゴの中へ放っていく。


「えっこんな買うの?」


「当たり前だろ、なんせ今日はお前の歓迎会だからな」


マコトの目線はあくまで肉の賞味期限を差していたが

その一言で胸弾む気持ちになった。


マコトがあれやこれやとカゴに入れて行く内に

俺は両手にカゴを持たされていた。


本当に俺の歓迎会なんだよな…?

少し疑う俺と裏腹にマコトは澄ました顔でいつも予想外の量を入れてくる。


会計どうするんだ…

夕飯時にただでさえ混んでるって言うのに

量は多いわ金はかかるわで俺は心底ドキドキしていた。



「なあマコト、俺は金出さなくていいのか?」


「ああ、別にこっちで払うから心配いらない」


「だってこの量だぞ、足りるのか?」


「元々お前に金は期待していない、一文無しだろ」



ぐさっと痛いところを突かれ、自分は職さえも無い事に気付く。


勝手に傷ついている俺を尻目にマコトはレジへ向かう。

マコトは財布から何枚もの札束を取り出し、レジの店員に


「いつもすみません」


と普段は見せない顔で優しく言うのだった。


根は優しいヤツなんだな、と少し驚いた。


長い会計が終わって普通の買い物じゃ考えられない量を

精算し終わると、鋭い目付きが俺を睨む。


「帰るぞ」


「この量持って帰るのか」


「まあ今に見てろ」

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