二年前に姉を失った葉風つばき。ある日、身体から花を生やした不気味な男と遭遇し、それに追いかけられる中で魔法少女になることを決断する。そう、二年前に亡くなった姉と同じ魔法少女に。
高所から落下することで魔法少女になるという設定や、少女の姿をした僕っ娘マスコットキャラなど色々ユニークな本作だが、それ以上に注目したいのが、緻密に構築されたストーリー。2年前に姉の身に何が起こったのか、魔法少女が戦っている存在『徒花』とは何なのか、なぜ魔法少女が誕生したのか。これらの疑問に答えるため物語は現在と過去を行き来し、様々な人間関係を織り成しながら、ある一つの結末へとたどり着く。しかし、そこで得られる答えとは……。
誰もがハッピーエンドを望んでいたはずなのに、思いはすれ違い続け互いを傷つける。絶望的な運命の中で、それでも最善を為そうと抗う登場人物の姿は、美しい文章の力も相まって切なくも力強い印象を残す。
(「魔法少女の物語」4選/文=柿崎 憲)
インターネットが発達し、物語に触れやすくなった昨今。読者はより多くの”終わり”を見届けているような気がします。必然、その重要性にも目が向けられ、今では”終わり”の在り方は作品の最重要な要素にまでなっていると言えるでしょう(私もハッピーエンドタグを漁ったりします。逆もまた然り)。
この作品は、そんな世の風潮を知った上で蹴っ飛ばすが如く、”終わり”の持つ圧倒的な力に真正面から向かい合った作品です。
たとえ1つの物語が終わりを迎えても、人は前へと進めるのだ。だから足を止めることはしない。そんな強さが、いつしか次の物語を生み出している。物語は絶えることなく繋がり続け、より大きな物語として、新たな終わりへと辿り着き。そして「よし、これなら終わりを許してやろう」と納得出来る結末を迎えるまで、歩みを止めることはないのだろうと信じられる。そんな強さが『落花製魔法少女』という作品の魅力であり、延いては『さちはら一紗』という作者の魅力である。私は、そのように強く感じるのです。
この物語は、タイトルから分かる通り『落下』を題材の1つとしています。終わりに挑み続ける強さを持つ作者が、落下という「終着点に辿り着くまで加速し続ける行為」を題材として何を描いたのか。このレビューを読んだ方がそれに興味を抱いてくれることを祈りつつ、ここを着地点とさせて頂きます。
……『落花製魔法少女』はいいぞー!!!(地下からの叫び声)