一緒に音楽をやっても、絶対に分かり合えない。
ひとには、どんなに歩み寄ろうが壊せない壁というのがあります。
たとえばエンジョイ勢とガチ勢だとか、恋する相手とか、そもそもの恋愛対象だとか、神様を信じるか信じないか、とか。
それがどんなに親しい相手でも……たとえ古くからの付き合いでも、ずっと一緒にくっついてる親友だとしても、そういう『分かり合えないこと』というのは時として存在してしまう。
それでも……いや、それがあるからこそ、紡げる音が、言葉が、物語がある。
それぞれの登場人物が持ち合わせている、分かり合えないという残酷な現実。
その現実を、彼ら彼女らは真正面から受け止めた上で、出来うる限りやさしい結末へと進んでいきます。
もちろん合唱部を舞台とした小説。演奏描写もかなりのものです。文字からもステージの熱気が伝わってきます。
不器用ながらも互いに歩み寄り、奇跡的なバランスを保って進んでいく青春を、ぜひ。
真面目だけどどこか足りなくて、そんな不器用な主人公とその友人たちが、合唱部という舞台で織り成す青春群像劇です。
高校生というとても繊細な年頃。勉強や部活、進路や人間関係に恋まで、誰もが様々な悩みを持っています。
主人公もそんな若者の一人で、周りにうまく馴染めない自分と向き合いながら一生懸命に自分の居場所を探します。
この作品では彼等の複雑でガラスのような心を見事なまでに描ききっており、思わず「ああ、自分もこんな若者だったなぁ」と物語の一部分になったと錯覚してしまうほど、不思議な魅力に溢れています。
時折語られる合唱に関する専門知識も正確かつ丁寧に表現されており、筆者の音楽に対する愛情と熱意を感じます。
是非とも完結目指して頑張って頂きたい! 彼等がこれからどんな学生生活を送り、どんな結末を迎えるのか…非常に楽しみです。