主人公の情景、想い、そのディテールを見事に言語化した文章にひかれます。
本作品のタグの一つ、PDDとは広汎性発達障害、端的に言えば、コミュニケーションと社会性に対する障害のことだろうかと思います。こんなふうに病名を言葉として記述してしまうと、何やら重篤な精神疾患のようなイメージを植え付けてしまうかもしれませんが(これは世間に対してだけでなく、おそらく患者本人にとってみても)、コミュニケーションと社会性なんてものは、「正常」「異常」と明確に区分できる問題ではありませんよね。
疾患は社会が編み上げる、そういう側面があるんです。そして、それは容赦なく個人という存在に、関心の的を向けていきます。自分という存在に対する想いは社会が向けた関心によって捻じ曲げられてゆく。それは謙虚さ、あるいは自信のなさ、それとも疾患という仕方で……。
しかし、どんな時でも、そんな「不安」を包んでくれる暖かい想いがあります。それに気付けるかどうか、それは時に運であったりするわけですけれど、本作品を読み終わって、僕が感じたのは、二人の想いは決してすれ違ってはいなかったのではないか、という事です。