悲しみと後悔

「君は見たところ若い。なぜここにいるんだ?」

私は悩んだ末重い口を開いた。

「人生疲れちゃったんです。生きてても意味の無い人生なんてただの苦痛でしかないんです。小さい頃から過酷な環境で育って学校でいじめられ、会社ではぼろ雑巾のように使われて・・・それに死の向こう側がどうしても知りたいんです。だから私にとって死ぬことが人生のゴールなのです」

男は一瞬驚いたが次には微笑んでいた。

「そうか・・・君は人生と向き合ってその答えをちゃんと出せたんだな。俺は答えを出せずに死を恐れて後悔だけを残してここへ来てしまった・・・しかし君と出会えてよかった・・・さて俺はそろそろ行くか・・・」

男の言うそろそろ行くかという言葉に疑問を抱きつつ、男が暗がりへ消えていくのを私は見ていた。

消えていく男は最後に

「もし来世があるなら君は今よりしっかりした良い人間になる。俺が保障するさ。だから次は自信を持って生きろ」

そう言って消えていった。

「どうしてだろう・・・こんな気持ちは初めて・・・」

嬉しくてどこか悲しいと感じるのは初めてだった。

私は沈んでゆく夕日を眺めながらずっと涙を流していた。

どんどん視界が暗くなっていき私もあの男同様ついに行く時かと思った瞬間だった。

しかし私は思わぬ場所にいた。

気づくと私は夜の学校にいた。

学生の頃いじめら続けた忌まわしき我が母校である。

「なぜこんなところに・・・」

学生時代を思い出すだけで怒りと憎しみが沸いてくると同時に、先ほどまで流してた涙はたちまち乾き私を炎のように燃え上がらせ、その場にあった椅子や机を蹴り飛ばし怒りを露にした。

「どうして・・・どうして!」

すると背後から

「きっとお姉ちゃんにはまだ後悔があるんだよ」

後悔?後悔なんてあるわけがない。

だから私はこうやって自殺して死後の世界にいるのだから。

しかしそれを否定するように背後の声はこう言った。

「私にも後悔があるからここにいるんだよ。私ね生まれてくる前に死んじゃったの。お母さんのおなかから流れ出ちゃったの。お母さんは酷く悲しんだ。わたしはお母さんを悲しませたくなかった・・・だからここにいるの」

静かな教室にそんな言葉が小さく響いた。

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生死の狭間で χおそばχ @ymk_neko

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