生死の狭間で
χおそばχ
希望と絶望
私は生きることに疲れました。
この先真っ暗な人生を歩むことは水の流れよりも遅く、痛みよりも苦痛です。
どうか先に命を絶つことをお許しください。
それではさようなら。
その日私はクスリで自殺をした。
身寄りの無い私にとって生きてても意味の無い人生に嫌気が差して自殺をしたが後悔などしていない。
幼少期から家庭内暴力を受けて育った私は学校でも特に理由も無く虐めを受け、逃げるように高校を卒業した後就職をしたが、就職先で過酷な労働環境を強いられて人生に行き詰まりを感じて自殺をした。
25年と6ヶ月辛抱して生きて来たが私の人生を例えるならまるで毎日が沼のように深く、真っ暗で希望の無い人生だった。
死ぬことは怖かったがいざ行動に移すと最初は苦しいもののあっという間に体が痺れ始め、目の前の景色が薄れていくのがわかった。
体がゆっくり水に沈んでいくように心地よく、氷のように冷たくなっていくのを肌で感じた。
私は小さい頃から死の先にはなにがあるのか興味があった。
果てしない夢を見続けるのか、それとも意識のない真っ暗な空間に行くのか想像がつかなかった私は人生から開放されるのがゴールであり、仮に行き先が天国であろうが地獄であろうが答えを知ることが出来ればよかった。私にとって死は最高の幸せであり、究極の美という理想を抱いていた。
しかし死は私が思うようなものではなかった。
気づいたら私は真っ暗な場所にいた。
真っ黒と言う色では言い表せないそこはまるで光をも捻じ曲げてしまいそうな空間だった。
「ここはどこだろう」何も見えない。しかし何も見えなくても良いのだ。
しかしふと気づいた瞬間そこには見慣れた景色が見えていた。
昔一人でよく遊んだ夕日が見える大きな丘の公園に私はぽつんといた。
そこにあるベンチに腰をかけてゆっくり夕日を眺める。
「懐かしい・・・学生の頃よくこうやって夕日を眺めたな」
あの頃は逃げ場が無く、よくこの公園に来ては夕日を眺めて時間を潰したことを懐かしく思った。
そんな時遠くから見知らぬ一人の男がやってきた。
「やぁこんにちは」男は私に挨拶をしてきた。
私も「どうもこんにちは」と挨拶を返す。
きっと男も何らかの理由で死んでここにいるのだろう。
男は口を開きこう言った。「俺は妻や子を残して病気で死んでしまったんだ。長く辛い闘病生活だったけど愛する妻や子に囲まれて死ぬことができてよかった。だからこそ死が怖くもっと長く生きたい人生だった」
それは私にはない暖かみのある言葉だった。
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