第3話 うるうる系ハートビーム飛来!!
特航科っていうのは、たしかに特別らしい。
校舎だけでなく、学生寮も別に用意されている。
といっても、寮まで新設ではない。
いや、見方によっては更に特別感が増すというか・・・
とにかく俺は今、学生寮として与えられた地上42階建てのタワーマンション、その最上階の部屋にいる。
すげぇよこれ、下手したら俺の故郷の山より高い・・・なんてことはないだろうけど、天野橋市が一望できる。この夜景は中々のものだ。
田舎の山で見る夜景も綺麗だけど、街中の夜景ってのも捨てたもんじゃない。
部屋の広さは4LDKで、全部の部屋が恐ろしく広い。
家財道具はそろっていて、そのどれもが高級品。
リビングのTVなんか60インチも有る。こんな生活、故郷じゃまず無理だろうな。
4畳半の田舎の我が部屋が、早速懐かしい。
で、その自慢のだだっ広いリビングには、俺の他にもう1人いる。
そんな彼女は、俺のTシャツを着て呑気に俺のことを見つめている。
「で、あの、由貴美さ」
「お姉ちゃん、でしょ♡」
おれ、このハートビームの応酬に耐えられるんだろうか?ちょっと自信ない。
「なんというか、故郷の姉貴の事もそう呼んだことないんですよ。ずっと下の名前の初音って呼んでいたから」
「おおおおおお♡!!」
やべぇ、ハートビームの威力がレベルアップした!!眼の形がまんまハートです。
「と言う事は!!蓮太くんにお・ね・え・ちゃ・ん♡って呼んでもらえるのは、この世で僕1人だけ、な~んだね♡」
なんでこう、いちいち可愛いんだよこの人・・・ってか違う違う!!
たしかにこの展開、男子ならときめかずに居られないシチュエーション。
1人暮らしの部屋に、絶世の美女と2人っきり!!そこで据え膳食わぬは大馬鹿ものだろ!!って思っていた時期が俺にもありましたが、いざそうなってみるとそう言う気、起きないわ。
頭の中で、はてなマーク担いだちっちゃい俺が沢山、所狭しと走り回っている。
そういやこの人、いつどうやって入ったんだ?
俺がこの部屋に初めて入ったのは学院長から説明を受けた後、つまり今日の夕方。
ここに俺が住むことは、限られた人間しか知らないはず。
それ以上に不可解なのは、この人の言う事だ。
俺の姉を自称しているし、1,200年前に産まれたとか言ってるし・・・
あと、俺が浦島太郎の子孫っていうのも気になる。
そんな話、家族から一度も聞いたことがない。
それ以前に浦島太郎は童話だが、彼女の話が本当ならば、彼は実在したって事?
あ~もぉ~おおおおおおおおお!!
どこから話し聞いたら良いかわかんねぇ!!
「なに頭抱えてるの?別に良いんだよ?僕のこと襲っちゃっても♡」
ゴメンナサイ、そのリミッター解除は無理っす。
いくらなんでも出会ったばかりの人にそんなこと出来ないし、それに俺・・・
どうやって良いかわかんねぇし・・・
「その前に、ゆきみ・・・じゃなくて、お姉ちゃんは何も持ってきてないの?」
とりあえず、話題を変えてみる。
「うん、そうだよ♡」
ナチュラルに応えますね、この人。
「だって私、ここに住め!って言われてるし、必要な物は全部揃ってるからって」
それで全裸で俺を風呂場で出迎えたんですか?いやいやありえんでしょ・・・
そういえば!!俺はまだ自分の部屋以外を見ていない。
4室有る部屋の内、俺は玄関に一番近い部屋を自室として使うことにした。
自室以外ではトイレと風呂場、リビングしか見ていない。
気になった俺は、全力ダッシュで他の部屋に突入する。
リビングの一番近く!!空っぽ!!
その向かいの部屋!!同じく空っぽ!!
じゃあ、俺の向かいの部屋!!ベッドと机が置いてある・・・
クローゼットは?!!思い切って開けると、ワァオ!!
女物の私服と制服、それに女性用下着がてんこ盛り。
ウンウン良いねぇ、パットの入っていないBカップ用のブラ!!
色もパステルカラーばかりで、初々しさ爆発!!
こういう下着こそ、俺が求める桃源郷にふさわし・・・ってちゃうやろ!
もっかいダッシュでリビングに戻る。
「あなたの部屋にちゃんと服がありました!!とりあえずそれに着替えて」
「え~、僕は蓮太くんのTシャツ、気に入ってるんだけどな~。いい匂いだし」
俺を見上げるその姿勢だと、伸びたTシャツの首元からぷっくりと膨れた美しい小山の曲線が、見事に伺えますね。
このカット、重要ですよ!!
頂上がぎりぎり見えるかどうかのチラリズム、いい具合のカットですよ!!
あどけなさとエロスが混在するそこから!!伝説の楽園の香りが、優しくそっと全身を包み込む様に漂ってくるだろう?
・・・うん、とりあえず失楽園しておこう、今は。
「自分の服があるなら、その方が良い」
「ダメ・・・かな?」
うるうる系ハートビーム飛来!!シールド展開!!出力最大!!
間に合いません!!直撃、来ます!!
さっきまでの可愛いオーラ大爆発もやばいけど、縋るような、瞳をうるませたこのハートビームも相当やばい。
思わずキョドる。もう何度目かわからないけどキョドる。
「きょ、今日だけですよ!!ああ明日からは、ちゃんと自分の服、着てください」
「・・・うん♡!」
パァアアアって効果音聞こえちゃったよ、俺。
由貴美さんは、咥えたボールをご主人様に返す子犬のような、すげぇ無邪気な笑顔している。
しっぽ生えてたら、ぶんぶん振り回して千切れるかもね。
エロエロな女の顔もできるし、可愛さ満開の表情もできれば、無邪気で素直な笑顔も出来る。
ほんと、俺の心わし掴むプロなんじゃないでしょうか?
「え~と、でも、なんでまた同じ部屋なんでしょうか?」
「校則に書いてあるよ」
俺は慌てて、生徒手帳を取り出す。
スマホ式の生徒手帳っていうのが、いかにもこの学校らしい。
校則アイコンをタップし、該当箇所を検索してみると・・・
「特航科学生寮は、科の制式採用が決まるまで、民間のマンションを借り受けて使用する。学生は全員、同じフロアにて共同生活を営むこと」
爽やかドSスマイルが、嫌でも思い浮かぶなぁ・・・
たしかこのフロア、4LDKの部屋が2つしかないはず。
つまりどっちかに住むしかないわけだけど、あれれ?おっかしいなぁ~。
学生の数に対して、お部屋の数があっていないよ?
本当なら、1人につき4LDKがあと4部屋、合計5部屋必要じゃない?
「隣のお部屋は既に入居者が居るみたいだし、蓮太くんの名前が表札にあったから、僕はこっちって決めたの!!そっれに~、姉弟が一緒に住むのは当然だしね♡」
ぬ、ちょっとだけハートビームに耐性が出来た気がする。
画面イッパイのゲージで、1ドットもないけど・・・
ちょっと余裕ができたので、思い切って突っ込んだ質問をしてみる。
「ところでその、1,200年前に産まれたっていうのは、本当なんですか?俺達が姉弟・・・って言うか、親戚みたいなもんっていうのも」
「本当だよ!僕は浦島太郎の娘で、でも、産まれた直後は地上の空気が体質に合わなかったから、海底のお船で1,200年間ずっと眠ってたんだよ!蓮太くんの遠い先祖が浦島太郎っていうのもホ~ント♡」
今の空気のほうが汚れているような気がするんですがね・・・
しかし、学園試練ものの次はSF展開ですか?
にわかに信じ難いですし、展開詰め込み過ぎじゃないですか、これ?
でもまあ、目の前に居る由貴美さんの頭髪はとても鮮やかなライトグリーン。
現実にはありえないわけで。
ウィッグ?植毛?ヘアカラー?いやいや、そういう不自然さは感じない。
俺がずっと見つめていた視線に気付いたんだろうか?
由貴美さんが恥ずかしそうに自分の髪を弄ぶ。
「この髪の色、珍しいみたいだね。だから、普通の学校には通わせてもらえなかったんだ・・・」
寂しそうな目、ちょっと意外。
「それまでは、どうしてたの?」
「島でずっと暮らしてた。子供は僕1人だけ。お世話をしてくれる大人は沢山居たけど、みんななんか冷たかったな・・・」
こんな目にもなるんだなと、少し心が痛くなる。
彼女の話をすべて信じることは出来ないけど、ずっと寂しい思いをしてきたのは、その目を見れば判る。
「ごめんなさい」
「良いの!!気にしないで!!今はこうしてみんなが居る学校に来れたわけだし!!」
大丈夫と言わんばかりの力強い笑顔が、俺の心に染みる。
たしかにこの学校の生徒なら、頭髪の色をイジるような奴は居ないだろう。
人格が出来た人が多いから、他人を貶したり侮辱する人は、少ないはずだ。
「それになんといっても、愛しの蓮太くんに会えた!!お姉ちゃんは幸せだよ♡」
ハートビームがちょっと心地よい。
あれだけ寂しげな目をした人から好意を寄せられるのは、悪い気がしない。
寂しかった心が潤うなら、一緒に住むのも有りな気がする。
根掘り葉掘り聞くと彼女の嫌な思い出や、寂しかった頃を思い出させてしまうかもしれない。
とりあえず、俺の先祖が浦島太郎とか、そういうのは一旦置いておこう。
住むための空間は十分にあるし、パーソナルスペースも守れそうな気がする。
「でも、一応同い年なんだよね?」
「そうだよ!!眠っていた頃を除けば、私は立派に15歳!6月28日に陸に上がったから、もうすぐ16歳になるんだよ!」
つまり、眠りから覚めて成長が始まったその日が、彼女の誕生日というわけか。
「それなら、お姉ちゃんじゃなく無い?」
「良いの!!蓮太くんは9月生まれでしょ?だから、僕のほうがお姉さん!!」
頬を膨らませて怒る顔も、なんだか可愛い・・・っていうかよく知ってますね、俺の誕生日。
「そして、僕達は明日から同じ教室に通うんだよ!!私も特航科だから」
今更ですが、校則に従って同じ部屋で暮らすという事は、彼女は特航科の学生という事。つまりそれは、彼女がこれから運命を共にする大切な仲間と言う事。
正直ビックリだ。
田舎出身の体力バカな俺と、いまいち掴みどころの無い不思議少女な由貴美さん。
こんな2人がアストロノーツを目指すとか、冗談にしか思えないだろうな。
けどまあ、なんかそういう流れなんだろうなと、半ば諦めの境地に達する。
いきなり無理難題をふっかけられたけど、天野橋学院に無事入学できたし、彼女も彼女なりに努力を重ね、辛い思いをしてこの日を迎えたんだろう。
やれることを精一杯やる。俺達に出来ることは、それだけなのだ。
だったら、この人と一緒に頑張っていこう。
なぜだか納得してしまった俺は、握手を求めるように右手を差し出す。
「よろしくお願いします。由貴美さん!!」
「も~、お姉ちゃんでしょ!!プンプン!」
この怒り方は、ちょっとイラッとするかな?
ぶりっ子が過ぎるというか、古いというか・・・
まあでも、目の前の彼女を放って置くことは出来ない。
大切な仲間の1人なんだし。
照れるように笑いながら、由貴美さんはその手を握ってくれた。
小さくて柔らかくて、壊れてしまいそうな、可愛いその手。
この手も俺が、守らなきゃならないんだよな・・・
「さ、そろそろ寝ましょうか!」
「うんうん、さっそく今から一緒に寝て、あんなことやこんなこと!!沢山しちゃおう!!」
「いや、そこは明日も早いからって事なんですが・・・」
俺の貞操、ちょっとピンチかもしれません・・・
昨日は疲れていたことも会って、風呂に入り直したらすぐに眠たくなった。
ええ、もちろん1人で風呂に浸かり、1人で寝ましたよ?
なんかそういうの俺には早い気がするんだよね。もちろん憧れては居るけどさ。
けど、いきなりメインディッシュってのはどうかな~と思うんだよ。
恋人らしい時間があってこそ、そういう時間は堪能できるとわけで・・・
スイマセン、ただのヘタレです、本当に申し訳ありません。
で、今朝は快調に目覚めたわけです。
朝食は由貴美さんが作ってくれた。
と言っても、トーストとバターと牛乳用意してくれただけなんだけどね。
サラダぐらいは欲しかったな・・・
新生活最初の朝を、出会ったばかりの人と迎えるのは不思議な感覚だった。
そして、2人揃っての登校。
イヤ~~~スイマセンなぁ、リア充させてもらって!
俺の人生、ここまでドドメ色だったので、これぐらい許して下さい!!
俺達の住むタワーマンションから、学校までは歩いて大体小一時間程度。
この学校は全寮制になっていて、一般の学生寮は学校から歩いて20分ぐらい。
だけど、特航科の学生寮として割り当てられているタワーマンションは、学校から離れた中心街にあるから、割りと歩く。
さて、この街の説明しておこうかと思う。
俺も改めてこの街の事を整理しておきたい。
天野橋市は、8年ぐらい前の市町村合併によって生まれた比較的新しい市だ。
名前の由来はもちろん、天野橋学院。
すげぇよな、私立学校の名前がそのまま市の名前になるなんて。
学院が無くなったらどうするんだろう?他にも学校があるって言うのに。
元々、この辺には姫神海洋グループの小さな造船所があったんだが、そこも40年近く前に閉鎖されて、かなり寂れた町や村が点在するだけだったらしい。
そこに、姫神海洋グループが人材育成校を建てる計画が始まったのが、16年前。
首都圏と大阪のちょうど中間。名古屋と静岡の中間辺りでもあるこの地域に、姫神海洋グループは多くの土地を持っていた。
そこに乗っかったのが、挙母自動車。創業の地が近いから、気になったんだろう。
もともと挙母自動車と姫神グループは業務提携を結んでいて、日本の戦後復興を進めた2大企業としてその名を馳せている。
両社の共同計画による人材育成計画は肥大し、結果的にその計画は一大学術研究都市の開発へと、方針を改めた。
その壮大な計画に更に乗っかったのが、竹芝航空宇宙産業。
中部圏の内陸部に建てられた、自治体運営の物とは違う新しい試験用空港建立を計画していた彼らには良いタイミングだったわけだ。
ただ、一気に多数の研究施設や大学が寄り集まったおかげで、この学術研究都市は幾つかの行政区をまたぐほど広大になり、それでは何かと不便ということで、8年前に市町村合併で生まれたのが天野橋市というわけだ。
新幹線の駅も近く、日本の大動脈たる高速道路のインターチェンジだってある。
竹芝航空宇宙産業のおかげで、海上に空港も出来た。
おかげでこの街は、名古屋と静岡に続く東海エリアを代表する第3の街として、その発展に期待が寄せられている。とは言え、本格的な開発が始まったのが8年前だから、まだまだこれからッて感じだな。
俺達の学校は海側で、タワーマンションは内陸側にあるから結構距離がある。
田舎暮らしの俺にとっては、これぐらいの距離はどうってことはない。
華奢に見える由貴美さんも、意外と平気でついてくる。
島育ちって言ってたから、割と俺に近い境遇だったのかも?
建設途中のビルが立ち並ぶ中心街を抜けると、一気に視界が広がり、郊外特有の景色が飛び込んでくる。
中心街と学院エリアの間には、学生寮が立ち並ぶエリアが存在する。
デザイナーズマンションの集合体ッて感じで、流石に建物も新しくておしゃれだ。
それなりに自然が残っている中で、それらと調和するように作られている。
高等部の他に中等部や大学の生徒、学院関係者も暮らしているってことだから、学生寮エリアも割と広い。ちょっと大きめの団地街ッて感じかな?
校舎までの距離はこちらのほうが近くて良さそうだ。
さて、そうしてたどり着いたのが天野橋学院高等部・・・の本棟。
特航科の校舎は更にこの奥にあるし、中心街は学校から離れているから、俺達2人は早めに家を出なければならない。
で、この学校の校門から本棟校舎までも割りと距離がある。
一般の学校設備だけじゃなく、高等部専用の研究施設や開発設備も揃っているから、敷地がやけにバカっ広い。
だから、校門から校舎に伸びる道もかなり長くなるわけだ。
ま、由貴美さんとこうして毎日登校できるんなら、少しでも長いほうが良い気もするけどな。
で、その道を進んでいたら居ましたよ、お嬢様。
隣りにいた由貴美さんが「おお!」って小さな声を上げるぐらい、上品かつお金持ちなオーラを纏った1人の少女が、悠然と校舎への道を歩いていらっしゃる。
「すっごい綺麗な人だね~」
由貴美さんの言葉は、素直に彼女を賞賛する気持ちでいっぱいだ。
後ろ姿だけでも、その美しさが伝わってくる。
金髪のロングヘアー。赤いリボンで上品にまとめたその髪は、まさしく豪奢。
ファサァ~って髪をたくし上げたら、そこから光の粒が零れ落ちそうなぐらいだ。
手提げ鞄を両手で前に持ち、静々と歩きながら、ときおり周りの生徒へとにこやかにお手を振っていらっしゃる。
そりゃあ天野橋学院は名門だから、居る気はしてたよ、こういう人。
で、実際に目にするとやっぱり感動する。
その姿はまさに、アニメの中の超お嬢様。
そしてまた、そのスタイル!!これがまた!!美しい!!
脇から腰、そしてお尻と太ももを経て膝まで伸びるその曲線は、たおやかな指で美の女神がそっとなぞったかのごとく、極めてなめらか、かつ優しいS字カーブ。
このカーブをフォントに用いたら、世界中のデザイナーが絶賛し、この世の全てのSという文字が置き換わってしまうぐらいの、まさしくベストバランス。
ボンキュッボンとかのたまう馬鹿者が多いが、個々のパーツだけデカく、もしくは締まっていれば良いというものではない!!!大切なのはバランス!そう、バランスなのだよ!!
特にお尻の脇から膝にかけての太ももの曲線。これこそ究極にして至高だ!!
太すぎず、細すぎず。
絶妙な太さのその聖なる2柱には、余分な肉などついては居ない。
そして、お約束の黒ニーハイが形作る見事な段差。この締り具合が、彼女の体脂肪率が優れていることを悠然と物語る。
黄金比率の絶対領域。ミニスカートと、ニーハイの間に生まれるその絶対領域の縦横比は、神さえも求めて止まない究極の黄金比といえるだろう!!
・・・だめだ、俺ではこの美しさを語り尽くせない・・・
某お嬢様学校のサンプル様なら、なんと語り継ぐのであろうか?
あの方の力が羨ましい・・・とか勝手に妄想していたら、なんか目が合ったよ!お嬢様と!!来るか?プリンセススマイル?いや、身構える必要などない。
優しい光に満ちた、高貴なる笑顔。
そのご尊顔を覗うことが出来るのならば、それは行幸ではないか!
よしこい!!その輝きで俺は、今朝の気分を最高潮にまで引揚げ
ゾクっっっっっっっ!!!
あれ?今俺の背中に悪寒が走ったんですが・・・
俺の背中の神経よ、これは間違いですよね?
我、獲物を見つけたり。
言葉にすると、そんな眼光を受け取りましたよね?俺の視神経。
いや、やっぱり何かの間違いでしょう。
眼前を優雅に歩く彼女は、それはそれは清楚で清らかなオーラを発していますよ?
いくら俺がこの学校に不相応とはいえ、そのような視線をお向けになるはずが
ニタァっ!!
・・・ごめん、俺の視神経&背中の神経。君たちに間違いはなかった。
あれ、獲物をどう嬲ろうか見定める、悪魔の笑顔ってやつです。
学院長の爽やかドSスマイルではない。
ドS帝国本丸に鎮座した悪魔が発する、危険な表情。
アンバランスとかそんなレベルじゃねぇ!両極端すぎるだろ!!
人は心のなかにヤヌスを・・・とかそんなもんじゃない!!
あれは別人レベルだ!!
爽やかなノーブルスマイルから、どうしてあのようなドス黒く、悪魔と野獣がミックスされたオーラが生まれるというのか?
隣で由貴美さんまで震えている。
そりゃ俺の隣に居るってことは、あのデビルズスマイルを見てしまったわけで。
「な、なんかイメージと違いそうだね、あの人・・・」
隣で由貴美さんがガクブルしている。もちろん俺もそれに同意する。
「うん、お嬢様・・・じゃないのかな?」
「お嬢様にも色々あるし、ほら、意地悪な悪役系のお嬢様も居るじゃない?」
「そう・・・ですね、いろいろな人がいますから・・・」
「関わり合いにならないほうが、良さそうだね・・・」
件のお嬢様は、本棟校舎へと消えていった。
それを見届けた俺達は、安堵のため息をつく。
しかし、俺たちは気付いていた。この会話と先程の状況は、まさしく【アレ】だ。
誰もが避けられない、運命の通過点。その後の展開を左右する、重要な分岐点。
フラグ。
この三文字が、頭から離れねぇ!!
由貴美さんの沈痛な面持ち!!つまり彼女もそう思ってるということ!!
とにかく俺たちは、新学期を迎えるものとは全く違う覚悟を胸に、特航科の校舎へと向かったのであった。
なんでまた浦島太郎なんですかね? @InVil
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