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極秘資料 ※ネタバレ注意

 2017年某日


 東京都渋谷区に突如として現れた超存在――『怪獣』。これはその彼らの資料を、出来る範囲でまとめた物である。

 彼らは一馬達の世界――ここでは『この世』と表記しよう――とは別の世界『異界』から現れた存在である。この異界は人間からは観測は出来ないが、その正体は力と力がせめぎ合う……概念的で過酷な世界である。


 この世とは物理法則が異なり、人間の常識など全く通用しない。決してあり得ない事だが、仮に人間が行ってしまったらどうなるのかは保証出来ないだろう。

 そしてその世界にも住人がいる。それこそ怪獣であるが、物理法則が違うだけあって姿という概念は意味を成さない。


 あの異形の姿は、その住人である『何か』がこの世の物理法則に従って、最適な姿へと変わった物である。


 今回この世に現れたのは六体。順に追って説明するとしよう。




魏雷ギライ


 身長:35.6m(角を含めた物)

 体重:測定不能(他の個体も同様なので、以降は表記しない)

 武器:羽根からの放電 六本脚の鉤爪


 最初に渋谷の駅に出現した昆虫型怪獣。

 黄色の筋が刻まれた黒い甲殻に身を包まれ、三本角を生やした甲冑のような頭部が特徴的の、カブトムシを思わせるような姿。

 地下を掘っている最中――実は凱虞を捜していたと思われる――に、餓蛇へと攻撃され沈黙。その死体は後の練魎レンリョウの素体にされてしまった(それは鎌角や双魔も同様)



餓蛇ガジャ


 身長:30.7m

 武器:鉤爪 鉤爪から放つ火球 炎の剣 頭部尻尾


 武者を思わせる形状をし、灰色と群青色を基調とした人型怪獣。なお瞳は四つあり、赤色。

 火球に炎の剣、頭部の尻尾など遠近に優れた戦法を持っている。魏雷を倒した後、皇軌に襲い掛かるが返り討ちにされ沈黙。後に皇軌によって一馬の眷属とされる。



皇軌オウキ


 身長:34m

 武器:真紅の光線 尻尾 身体に纏う真紅の閃光


 白銀の無機質な装甲を纏い、金色の両眼を持ち、龍を思わせる姿をした神々しい怪獣。

 身体中から放出する、赤い粒子を操る事が可能。それを圧縮した光線や、身体中に赤い光を纏っての突撃など、強力な攻撃を行う。また尻尾の扱いに長けており、さながら鞭のように振るう。

 唯一人間(少女)の姿を取り、言葉を話せる存在(理由は後述)。生き残る為に一馬に協力を要請、彼に餓蛇を操る力を与える。


 十分に強力な存在であるが、それでも餓蛇を使ったのは確実に生き残る為。他の怪獣より生存本能が高い故であり、その目的を邪魔する者は決して許さない。

 しかしその目的の為に他者を不幸にした事が、一馬の逆鱗に触れたのは言うまでもないだろうか……。

 


鎌角レンカク


 身長:40.4m

 武器:頭部の鎌 鋭い牙 二本の尻尾


 馬か牛を思わせる骸骨状の頭部。そして黒い装甲を纏い、二本の暗緑色の尻尾を持つ四足歩行の怪獣。

 地面を掘り進む事が出来、戦闘の際には頭部の鎌と二本の鋭い尻尾を振るう。反面、他の怪獣にある光線などの特殊能力がないのだが、それでも尻尾のリーチがそれを補っている。



双魔ソウマ


 身長:37m

 武器:(翼竜形態時)双頭からのミサイル (人型形態時) 両腕からの光弾 背中からのミサイル


 青い一つ目を持った灰色の双頭に、翼竜を思わせる赤い翼と胴体、そして棘が生えた尻尾が特徴的な怪獣。

 飛ぶ際に黒い煙を放出する事があり、それを人間が吸うとたちまち《眷属》へと変わってしまう。灰色の甲殻をし、胴体に六つ目を生やした昆虫のような怪物であり、既に人間の自我は持っていない。この怪物も黒い煙を放出し、仲間を増やそうとする。

 

 双魔はこの眷属を操る事が出来る。また双頭からミサイルを放つ他、何と人型形態に変形可能。その際に両腕に光弾を放つなど、どこかロボットを思わせる戦法を持っている。



練魎レンリョウ


 身長:40.9m(双魔の首を含めた物)

 武器:羽根からの放電 二本の尻尾 双魔からのミサイル 六本脚の鉤爪


 凱虞と彼に洗脳された少女、香澄が今まで倒された怪獣を融合させた合体怪獣。

 頭部と尻尾は鎌角 腕と羽根は魏雷、胴体と両肩の部位は双魔。香澄によって操れており、一馬にとっての餓蛇に近い存在とも言える。


 それぞれ怪獣の特殊能力を残っており、ふんだんに使用する。最後は香澄の気絶をもって機能停止。凱虞の光線に巻き込まれ、爆発四散する。



凱虞ガイグ


 身長:34.2m

 武器:右腕の巨大鉤爪 両肩からの円盤カッター 腹からの光線


 漆黒の無機質な装甲を纏い、緑色の両眼を持ち、獣人を思わせる姿をした禍々しい怪獣。

 この世に最初に現れた怪獣。一馬が見た『空から降ってくる巨大な人型物体』の正体である。

 異界では皇軌と何度も戦っており、彼女曰く『最大の敵』。彼もまた皇軌と同じように協力者を欲しており、彼の思念に気付いた香澄を一馬と同じような状態に施した。


 その際、副作用として香澄が凱虞を恋人だと思ってしまう。またこの時に凱虞も影響され、彼女を愛する存在と思うようになる。

 故に彼女を大切にしており、彼女が皇軌に殺されそうになった時に助ける事となった(そして意図していないが、一馬もまた助けている)。皮肉にもそれが一馬に攻撃を与えるチャンスとなり、そして皇軌と違って人間を理解した存在でもある……。

 



 彼らが争う理由は、人間の概念で例えるならば生存競争というべきか。

 過酷な異界に耐え抜く為、彼らは人智を超えた熾烈な争いを起こしている。なおある個体が死んだ場合には別の個体が生まれるなどして、怪獣の数が減る事は一切ないらしい。

 

 前述したように、この中で皇軌は人間の姿に化身出来る。

 少女の姿は、一馬に因子を与えた時に彼の思考を読み取り、形成させたものである。主な目的はコミュニケーションを取る為。


 しかし思考は怪獣その物である為、『心』という人間があって然るべき物を持っていない。自身への生存を最優先にし、一馬達を犠牲する。しかもそれは無自覚でやっているのだから、一馬という生贄に葬られたのは致し方ないのだろう。

 彼女に限らず、怪獣にあるのは執念的な生存本能。過酷な異界で形成された故に、他者を優先するという考えなどない。


 最後に彼らの最大の特徴は、人類の火器が一切効かない事。

 異界の住人である怪獣は概念その物であり、火器で倒すという事象が不可能なのである。すなわち核であろうがそれに類するエネルギーを持つ攻撃でさえも、彼らには通用する事はない。

 

 事実、一馬達がいるこの世とは別の世界――無論人間もいる――に、夥しい数の怪獣が紛れ込んだ事もあり、そこで破壊と災厄をまき散らしながら戦っていた。無論、人間達があらゆる兵器で殲滅しようしたが、全くダメージを与える事は出来なかったという。

 さらに彼らの超エネルギーにより世界の気象も狂ってしまい、天変地異が起こってしまう――渋谷の気象が狂ったのもそれが理由――。やがて最後の一体になった時には、その世界は滅んでしまったという。

 唯一倒す方法は『他の怪獣に倒してもらう』事。恐らくは彼らの持つ何らかのエネルギーがそうさせているだろうが、逆に言えば倒してくれる怪獣がいなければ完全にお手上げである。


 これらの情報から、決して他生物と相容れない……まさしく『いるだけで災厄を起こす存在』と分かるだろう。しかしもう一馬達の世界には現れる事はないに違いない。

 この世と異界が繋がるという事は、まさに天文学的な確率なのだから。そして一馬の世界に平和が戻っている間、彼らは異界で終わりなき戦いを繰り広げている事だろう……。

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カイジュウ・ハザード ――災厄ヲ齎セシ者達―― ミレニあん @yaranaikasan

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