けものフレンズ二次創作『りんごがり?』

ヤミヲミルメ

トビヘビちゃんです。

 私はパラダイストビのフレンズのトビヘビちゃん。

 鮮やかな緑色のパーカーを着ています。


 今、サーバルちゃんと一緒に、朽ちた洋館の庭で、かりごっこをして遊んでいます。

 一回戦も二回戦もサーバルちゃんに負けちゃって、三回戦の準備中です。

 今日はもうたっぷり遊んで、お日様も沈みかけなので、これが最終戦です。


 私とサーバルちゃんのかりごっこは、私が物陰に隠れて、それをサーバルちゃんが探し出すところから始まります。

 最初は納屋の隅で、次はテラスの下だったので、今度は屋根の上に隠れてみようと思います。


 っと、その前に……

 さっきから気になってたんですよねー、このリンゴの木。

 実がおいしそうに色づいて、思わず誘惑されちゃいます。

 にょろんにょろんとい上がります。


 あうう、木の枝にパーカーのフードが引っかかって脱げてしまいました。

 あぶない、あぶない。まだ脱皮の時期ではないので、かぶり直します。

 にょろんにょろん。

 また脱げました。もういいです。



 リンゴにかぶりつきます。

 むしゃむしゃむしゃ。

 あー、おいちい。


 そういえば、タコやイカは青い血だそうです。

 一般的な爬虫類はちゅうるいの血は赤色ですが、グリンツリートカゲの血は緑色です。


 あれ? 何でこんなこと思い出したんだろう?

 まあいいや。


 リンゴをもう一つ、もぎます。

 これはあとでカバンちゃんにあげるのです。

 大きすぎてポケットには入らないので、フードの中に入れておきます。


 おっと、いけない。

 もうサーバルちゃんが百を数え終わってしまいます。

 木の上では目立ちすぎます。

 早く隠れないと!


  バサッ!


 パーカーを広げます。

 木の枝を蹴って、洋館の屋根の上へと大ジャーーーーーンプ!

 トビヘビは滑空ができるのです!

 庭を飛び越えて華麗に着地!


  ズボッ!


 屋根に穴が開いて、私は屋根裏部屋に落っこちてしまいました。

 痛てててて。




 どうしましょう。真っ暗です。

「……おじゃましまーす……」

 お家の中に入ってしまったわけなのだから、あいさつします。

 返事はありません。

 このお屋敷は廃墟なのだから当然です。


 サーバルちゃんはもう私を探し始めているのでしょうか?

 ここに居れば見つからないかな?

 舌をチロチロさせて、ニオイの粒子をキャッチします。

 誰かが居ます!

 サーバルちゃんのニオイじゃありません!

 知らないニオイです!

 どなたですかと問うより早く……


「お腹……すいた……」

「ひっ!?」

 声は私の肩の辺りで聞こえました。

 気配も何もなかったのにです。


 振り返っても誰も居ない……

 いえ……

 カタンッ。

 私の背後で、私と一緒に落ちてきた屋根の破片を踏む音がしました。


「おいしそう……」

 バササササッ!

 何かが私に覆いかぶさってきました!

「きゃあああああああ!」




「トビヘビちゃん!?」

 屋根裏部屋の窓の鎧戸が勢い良く開かれて、サーバルちゃんが飛び込んできました。


 窓からの西日が、仰向けに倒れた私にのしかかる黒い影を照らします。

 光の中に居ても黒い姿。

 真っ黒なマント。


 私はこの姿を、図書館の本で見たことがあります!

 吸血鬼ヴァンパイアです!

 怖ーいバケモノです!

 ああ! 鋭い牙が、私の首に迫ってきます!


「にゃにゃにゃ!? トビヘビちゃん!! 何して遊んでるのー!?」

「遊んでるんじゃないです! 血を吸われそうになってるんです! 助けて~~~!!」

「わかった!! にゃーーーッ!!」


 サーバルちゃんが私に駆けよ……ろうとして、床が抜けて下の階へ落っこちました。

 廃墟なので、床板が腐っていたみたいです。


 ゴクリ。

 吸血鬼がツバを飲む音が、すぐ耳もとで響きました。

「いただきまーす……」


 これは……もう……迎え撃つしかありません!

 大きな口をグアッと開けます!

 知らない人が見ればあごが外れたのかと心配するぐらいの大口ですが、ヘビには顎の関節が二つあるんです!

 二段構えの特大の口で噛みつきます!


 ……かわされました。

 吸血鬼の髪が私の顎をなでます。


「トビヘビちゃん!!」

 階段を猛スピードで駆け上がってきたのでしょう。

 屋根裏部屋の、今度はドアからサーバルちゃんが飛び込んできました。

 でも、間に合いません。

 吸血鬼が首を伸ばし、私の……フードに頭を突っ込んで、中のリンゴにかぶりつきました。

「むしゃむしゃむしゃ。あー、おいちい」

「……あれ? 血を吸うんじゃないの?」

「吸わないッス。あちきはそういう種類じゃないッスよ。フルーツが主食のエジプトルーセットオオコウモリ、通称フルーツコウモリのフレンズのフルーツちゃんッス!」

 フルーツちゃんは、八重歯を見せてニカッと笑いました。




 一安心して、私とサーバルちゃんも自己紹介をします。

「脅かしちゃってごめんなさいッス」

「ううん、私こそ、吸血鬼だなんて思っちゃってごめんなさい」

「ほとんどのコウモリは血は吸わないッスよ。血を吸うのはチスイコウモリぐらいッス。あ、ちょうどサーバルちゃんの後ろにナミチスイコウモリのチスイちゃんが来てるッス」

「ええっ!?」


 サーバルちゃんが慌てて振り返ります。

 私も、目の前に居たのにまったく気がつきませんでした!

 黒いマントのフレンズが、屋根裏部屋の戸口に、頭を下にしてぶら下がっています!


「ほ乳類の、赤い、血……」

 チスイちゃんがつぶやきます。

「かりごっこ……する……?」


「なになに~? わたしが追われる側なの~? わっあーい! 逃げる役は久しぶりだよー! やろうやろう!!」

 そうしてサーバルちゃんとチスイちゃんはドアから飛び出していきました。


「あちきも、かりごっこやりたいッス!」

「では、私は追う側ですね」

 私とフルーツちゃんは、屋根裏部屋の窓から空へと飛び立ちました。

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けものフレンズ二次創作『りんごがり?』 ヤミヲミルメ @yamiwomirume

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