GOLDEN!!!

作者 鳥海勇嗣

40

14人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

さとり世代の前駆世代な主人公が、追憶を交えながら、生きている現在のひとときを切り取った物語。
ところどころに挟まれる退廃的な呟きに、おもわずふふと微笑ませてくれる美味しさもあります。
心の傷になりかねない哀しい出来事も、独特な語り口で感情を強く出さずに綴られているところが、作品を惹き立てているように感じます。そんな最後のシーンは、すごく印象的でした。
素敵な作品を読ませてくださり有難うございました。

★★★ Excellent!!!

 本作を読み始める前に、レビュータイトルに対する答えを考えてみて欲しい。

 迷い無く「今」と答えられる人にたぶん本作は合わないだろう。「小どもの頃」と答える人も違う。「大学生の頃」や「高校生の頃」と答える人ならばきっと楽しめる。「中学生の頃」と答える人はドンピシャだ。なぜなら、この作品の主要登場人物たちもそう思っているはずだから。あらすじには「光り輝かない青春時代」と記してあるが、タイトルの「GOLDEN」がイメージするものは「人生の黄金期だった中学時代」だろう。少なくとも僕はそう感じた。

 物語の軸となる登場人物は二人。中学時代は破天荒だったけれど現在では普通の派遣社員に落ち着いたヤッスンこと安河内。そのヤッスンの中学時代の友達でありどこか人とは違う雰囲気を放っていたヒロポンこと梅原。そして物語の軸となる出来事は「大人になった梅原の自殺」である。

 物語は「梅原の語り(中学時代)」→「安河内の語り(現在)」→「梅原の語り(中学以降、現在以前)」というサイクルを繰り返して進んでいく。視点と時系列があちこちにブレるので正直分かりにくい。一人称が共通だったり、中学時代の梅原視点から語られる安河内と現在の安河内が全く違うのも分かりづらさを助長している。しかし僕はこの流れこそが本作の肝であり、作品を心に深く染みるものにしている最大の要因だと思う。

 まず中学時代から現在。中学生の安河内がバカでアホで頭のネジが外れていてこいつどんな大人になるんだと期待半分心配半分を抱かせるようなキャラクターなのに対し、実際に大人になった現在の安河内は驚くほど常識人で一般人。この変化が「誰もがいずれは大人になる」という現実を読み手につきつける。当たり前すぎてどうしようもない、切ない現実だ。

 その切ない現実をつきつけられた後、中学時代と現在の狭間にいる梅原の語りが「当たり前の現実に当たり前… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

中学校時代の友達が死んだ――大人になった「彼ら」の元へ伝えられた、一つの報せ。そこから物語は動き出す。

文体、雰囲気がとても良いです。もやもやとした中学校時代の雰囲気を、そのまま捨てられずに、背負い続け、大人になり、より出口がないことに焦っているような、そんな状況が、一気呵成に続く独白形式の長文によって綴られています。脳内でぐるぐる回っている感じが、びしびし伝わってきます。

たぶん、今、30代半ばぐらいの男性には、ドストライクな内容です。90年代の青春風景がよみがえります。