よくある昔話2


昔、ムカシのおはなしです――から始まる桃太郎さんですが、桃太郎さんはなぜ、桃の中から生まれたのでしょう。


今回はその謎をみなさんにだけお知らせしましょう。

みなさんにだけ、です。

ナイショですからね。


もともと、桃太郎さんが入っていた桃は

天の国の神様にささげるものでした。

やおろずの神と言います。

難しい字で書くと「八百万」

数え切れないほどの神様が、という意味です。


そんなわけですから、みなさんが

この桃を食べるのは難しいでしょう。


生産者の桃農家、ヤマモトさんのお話です。


「丹精、心をこめて育てた桃ですけぇ。神様に食っていただけぇるとは、ありがてぇことです。ほんまなら、色々な方に食っていただきてぇところですが、やはりご神前ですから、そこはご容赦くださいませぇ、へぇ」


お分かりでしょうか。この桃は神様にお供えする桃なのでした。皆さんも徳をつめば、いつかは食べることができるかもしれません。そう、嘘をつくことなく。あざむくことなく、正直であれば。


これはなかなか難しいことでもあります。


さて、そんな神様だけの桃ですが、中には形が悪かったり、味が落ちることもあります。

大概は、天の国と地の国の交流事業で、プレゼントされます。

地の国とは、つまり地獄のことであります。

地獄の鬼さんたちは、日頃のお仕事のごほうびとして、喜んで食べるのでした。なんたって、神様が食べる桃ですからね。味が落ちても、これでもかとほっぺがおちると、評判です。


その中で、ごくまれに、桃がヒトの世に落ちることがあるのでした。

なんといっても、神様にお供えする桃ですからね。

恐竜の時代には、桃が落ちて、

恐竜たちをほろぼしてしまった、なんてこともありました。


桃から生まれた女の子が

竹から生まれたとかんちがいされて

かぐや姫と名付けられたことがあったりしました。


桃から生まれた桃太郎さんも

そんな桃の一つなのです。


生産者の桃農家、ヤマモトさんのお話です。


「まさか、わしの桃から、桃太郎がうまれたなんて、おどろいてますが、実はわしの桃から鬼ヶ島の鬼も生まれたわけでして。ニンゲンの皆様には、たいそうご迷惑をおかけしたしだいで、へぇ。たまたま桃太郎が鬼を退治してくれて、よっかたと思ってますわい」


もしみなさんの町で、

川から桃が流れてきたら

もしかしたら、鬼がはいっているかもしれないので、

そこはご用心くださいね。

もしかすると、

桃太郎さんかもしれないですけれど。


あたるもはっけ。

あたらぬもはっけ。


ちなみに生産者の桃農家、ヤマモトさんの年齢は

今年三全七百歳と、まだまだ若手。


「これからも、美味しい桃を丹精込めて育てますけぇ」


と意欲的に話されていました。

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