第4話 石板の謎

洞窟階位33位のルシローラ廃道をクリアし俺とアテナは老人の家(2階を借りた)で遅めの昼食を取っていた。


「アテナ、その石板の謎は解けたか?」


「いいえ、分からないけどこれは天空の街エルトリスの鍵になるかもしれないわ」


天空の街エルトレスとは前々回に「神秘的だから行きたい」とアテナが言っていた。


「謎だな・・・図書館に行くか?」


俺が居る町「エルバス」は「唯一ダンジョンが簡単な街」と有名でダンジョン階位37位(全40位)だった。そしてこの異世界に来て約4日経つ朝、俺達は川沿いにある「エルバス大図書館」に足を運んでいた。


「エルバスの歴史について調べられる本はありますか?」


「こちらです」


図書館の店員さんに連れられて端っこの棚に来ると「エルバス報告書」というぶ厚い本を手渡された。


「アテナ翻訳頼む」


「はいよ、スぺイク・マグリス」


また新しい魔法を展開しているアテナを見慣れた俺は窓から外を見ているとアテナが「読むよ?」と言ってきた。


「悪い、いいぞ」


「では・・・えっと。約27万年前、第5次魔法全面戦争で敗北し領地を奪われたエルバスはスピリット地方の北端に中都市として復活。そして戦争により領地を奪われ家を失った民は家を買うためにアルベーナに日夜働きに出ていたのだがその中には子供がいる家族がおり、仕事に出ている子供は親の帰りを待つかのように都市の出入り口で立っている。だが帰ってくる親も居れば親がいつまで経っても親が帰ってこない子供もいた・・・そしてその1000年後、一人の青年が馬にまたがってエルバスにやってきた。その青年は「エリシオン・ロウ・サンタウロス」と名乗り、そしてその男は鞘に収めていた剣でエルバスの近くの崖に穴を開けてダンジョンを作った。」


「ふむふむ・・・アテナ次は?」


「そうね・・・」と言いながらページを捲っていると俺がゲットした石板の絵が見えた。


「まて!そのページ読んでくれ」


アテナは急に叫んだ俺に少々戸惑っていた。


「これ?いいわ。青年はエルバスから去る際にこう言った「この大地の奇跡を集めてダンジョン最深部の穴に入れたまえ、そうすればお前たちは救われる」と。住人は青年の言葉に意味が分からず、研究者は「大地の奇跡」について研究を始め、数十年後研究発表会にて「大地の奇跡は今だ謎多き天空の街エルトレスの鍵」と判明。青年は出来上がった大地の奇跡を砕き、破片を地平線の彼方へ飛ばしたと言われているが可能性としては所々に現れたダンジョンのどこかにあると推測。」


「大地の奇跡・・・これがそうなのか?」


本に挟んであった写真と合わせるとそうには見えない。


「これ、石板と同じ千年竜じゃない?」


写真を睨みつけては石板を見るとたしかに絵が同じだった。


「アテナ、研究所の場所をマッピングしてくれ」


俺はそう言うと本を借りて外に出た。


「ソラ?どうしたの?」


「これはやばいんだよ」


アテナは小首をかしげながら「何故?」と聞いてくる。


「このままじゃエルバスが消えるんだよ」


現在ダンジョン階位37位なのだが「ランク外」になると消えてしまうということだ。大地の奇跡はそれを回避させるために勇者さんが粉砕したと考えたら?


「でも・・・下から3位だし」


「ゲームと同じだ!ランキングの上位になりたいと思えば誰でも努力して順位を上げるだろ!?」


「でも・・・」


「もし41位になればここは間違いなく消える。」


俺は戸惑うアテナをフォローしようと手を握り言う。


「アテナ。お前の力が必要だ、最高難易度のダンジョンを作って順位を上げよう」


「あぅ・・・そ、そんな・・・私」


顔を赤くして俯いているアテナに俺は笑顔で


「報告書みたいにこの都市がまた消えれば俺達の存在意義がない、ならば1位を取ってやろうぜ」


「わかった・・・じゃあルート・マップコード、エルバス研究所にマッピング。」


アテナの手の上に表示されたマップはアテナの言う通りに研究所にマッピングした。それを見た俺は「よし」と一言言うと


「さて、急ごう」


俺はアテナのマップを頼りに研究所に急いだ。


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数分、いや数十分走っただろうか?エルバス研究所と書かれた看板があった。


「ここか、エルバス研究所」


デカい建物と言い難いが研究所らしい外装なので間違いない。


「すみません、エルシオ・フェン・バルウェスさんは居ますか」


俺は中に入り、受付に人の名前を言うと「少々お待ちください」と言って裏方に入っていった。


数分後――


「すまないね、私がエルシオだ。」


裏方から出てきた研究者エルシオは白衣にツンツン頭という何とも感想が言えない髪型の人だった。


「私は天城青空です。こちらは仲間のアテナ。」


アテナはぺこりとお辞儀をすると「さて」とエルシオは一言置いて「座りなさい」と俺とアテナに促してきたので近くの椅子に座った。


「じゃあ、今日はどんな用で?」


手の指を交差させて問いをぶつけてくるエルシオさん。現在長椅子に座っているのはアテナ・俺で、向かい側にエルシオ・書記さん(?)が個々の椅子に座っている状況だ。


「大地の奇跡についてなんですが」


「ほう?それは現在研究しているんですが何処で?」


「この石板はルシオール廃道で人食い花から出たやつなんですが、この石板は何のためにあの人食い花の中にあったんでしょう」


バックの中から石板を取り出しエルシオさんに見せると・・・


「ここに眠りし大地の奇跡、我の儚い願いよ汝の耳へ届きたまえ。」


エルシオは渡された石板を裏返して裏に書いてあった文字を読んだ。


「エルシオさん?」


俺は何を言っているかが理解できなかったがアテナは「聞いたことがある」と言いたそうな顔だった。


「ねぇソラ。インデックスって知ってる?」


「ああ、Index Librorum Prohibitorumだろ?」


「ねぇ・・・なんで英語で言えるのにニートなの?」


実は俺は部屋で禁書目録の英語を調べていたので分かる。


「エルシオさん、禁書目録については私も知ってるわ。その言葉は禁書目録第1117章太古の歴史書から抜粋したんでしょ?」


もう何もわからない俺は黙ることにした。一方エルシオさんは微笑で


「そうさ、私も禁書目録を見ているんだよ。それじゃなければここまで言えないだろう?」


「大体、禁書目録を見ている自体もう貴方は人間ではない」


アテナは鼻で笑いエルシオを睨みつける。


「人間じゃない?馬鹿にされたもんだな・・・」


修羅場になりそうな場に隣で黙っていた書記さんが口を開いた。


「エルシオさん、アテナ様。ヒートアップする前に話を終わらせましょう。」


冷静沈着の書記さんはそう言うと再び黙った。


「ソラ!」


話について行けず黙っていた俺はアテナの声で我に返る。


「ああ、エルシオさん石板は俺が集めるんで解析お願いします。」


「ああ、任せてくれ」


そう言うとエルシオさんは立ち上がり、再び裏方へと消えて行った。


「なんなのよあの男」


怒っているアテナに「お前な・・・」とため息交じりに言う。


「まあ禁書目録なんか読んでいいのかっていうと良くはないよな・・・でもアテナ言い方な?」


「大体、禁書目録読んでるとか人間ではない」と言うのは失礼だろう、例え年齢が上だとしてもだ。


「まあ、いいわ早く帰りましょう」

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創造神と共に異世界転生~ゼロから始めるクリエイトダンジョン~ 柊 アヤメ  @Hiiragi_Ayame

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