何でも叶える叶子ちゃん

@sss

第1話

出張のため飛行機で移動していた。部下の桜叶子も一緒だ。


「先輩と二人で飛行機なんてドキドキします!」

「よくそんなセリフをぺらぺら言えるね」

「なんでですか?私、先輩のこと好きですよ?」

「やれやれ。こっちまで落ち着かないよ」

「私、今日はオープンな気分なんです。とっておきの秘密も教えちゃおうかな?」

「ああ。言いなよ」

「私、叶える子って書いてかなこっていうんです」

「知ってるさ」

「だから、私が願ったことは何でも叶うんです」


この子にとって「だから」とは何なのだろう。


「そういう血縁なんです。母は幸恵って名前で、幸せだけに囲まれて生きています」


冗談で言っている様子がないだけに怖い。


「信じてないですね?見せてあげますよ」


「今日のお仕事が無しになりますように」


叶子が目をつぶって唱える。途端にメールがくる。会社からだ。


先方の都合により会議中止。


「ほらね?」

「そんな。偶然だよ」

「まあ、良いですよ。信じない訳にはいかないですから」


「先輩とお寿司が食べたいなあ」


叶子がそう言うやいなや、二人は寿司屋に並んで座っていた。


「ほらね?」

「わ、わかったよ」


信じられないが信じるしかなかった。叶子は寿司を食べつつ自分の話をした。親には中学に入るまでは能力のことを伏せられていたこと、その後しばらくは能力を使って好き放題したこと、高校に入る頃にはそれにも飽きてあまり能力を使わなくなったこと。そして、時々こうやって能力を使って遊ぶこと。


「私、お寿司が大好きなんですよ。ネタも何でも好きで。でもまだ食べたいのに食べたことないネタがあるんですよね」

「ふうん。そんなのその能力を使って食べれば良いじゃないか」

「ホントですか?」

「ん?ああ、よくわからないけど」

「じゃあお言葉に甘えて」


「先輩のお寿司が食べたい!」


その瞬間私の体はシャリの上に乗っていた。巨大な叶子が見下ろしている。


「美味しいものがシャリの上に乗っていたらお寿司ですよね?」

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