エホウマキという生き物がいます

ころっけぱんだ

加工されるエホウマキ

 エホウマキがどのようにして食卓に上るか知っているだろうか?

 最近の都会の若者にこのような質問をすると、お店や工場で作られていると言う。

 馬鹿げた話だが、彼らを笑うことなどできない。彼らは知らないだけだ。

 だから伝えよう。エホウマキがどのように死んでいるのかを。


「エホウマキッ! エホウマキッ!」


 エホウマキ達の甲高い鳴き声が無機質な屠殺場に響く。彼らは今から自分達がどうなるかなど、わかっていない。職員達はそんな彼らに天井から吊り下げられたフックを突き刺す。


「エホウマッ! エッ、エピッ!」


 エホウマキ達は尻にフックが突き刺さった痛みで、その黒く長い体をビチビチと蠢かせる。

 だがそんなことなどお構いなしに、ゴウンゴウンという不気味な音を出しながらフックは彼らを運ぶ。ギラリと光るナイフを持った職員達の元へと。


「エボッ! エボウバッ! エボッ……」


 首元を鋭利な刃物が切り裂く。彼らはその痛みから逃れる術はなく、ただただ無様にただただ憐れな鳴き声を上げ、もがき苦しむ。もがくたびに切り裂かれた首元から鮮血が吹き出ていく。

 職員達はそんな彼らを気にする様子もなく、ひたすらエホウマキの首を切っていく。


「エボッ……。エッ、エ……」


 何十秒かすると動かなくなる。首がダランと垂れて、ただ黙って俯くだけの『モノ』になった。

 その後もひたすら機械的に何千ものエホウマキの命がここでは奪われていく。年に一度の行事のために。


 こんなエホウマキ達の死は、その多くが無駄になる。コンビニやスーパーに過剰に並んだ彼らの死体は余り、捨てられる。ただただ節分というイベントを飾る目的のために彼らは死ぬ。

 本来、エホウマキ達はこんなに死ぬ必要はない。エホウマキの死体を求める者は、こんなに多くない。

 だが、買いたくもない者に彼らの死体を買わせる人がいる。彼らの死体を売れもしないのに売る人がいる。


 私は問いたい。エホウマキ達はこれで納得するのか、と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エホウマキという生き物がいます ころっけぱんだ @yakisaba6

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ