眠り方のレシピ

屋根裏

眠り方のレシピ

最近、眠りへの落ち方を忘れてしまった。

 そういう時は、いろいろな方法を試す。あらゆる方法で、眠りを貪ろうとする。

 

 ある時は、穏やかな水面に揺蕩たゆたうように。

 目を瞑った闇に、自分を映す。自分ではない誰かの視点から。

 やがて水面との境目が曖昧になり、溶けるように一つになる。

 月の光か、部屋の灯か、ぼやけたを反射してさざなみをたてる。

 このまま、うろのような透明に滲もうか。

 

 ある時は、あらゆるものが形を変えて、一つになるように。

 細胞の一つ一つが飽和して、凝縮して。

 触れ合ったお互いの単位が潰れて、絡み合う。

 一枚の灰色となった自分は、まるでもやがかかったようなモザイクとなる。

 スピーカーから響く音も、もう届かない。

 このまま、虚のような透明に滲もうか。

 

 ある時は、夜に溶けるように。

 仰向けに横たわる自分の体が、少しずつ少しずつ細かい粒子となって、空気中を漂う。

 スピーカーから漏れる音と、溶けだした僕と、夜の黒を混ぜたらどんな色になるだろう。

 そんなことを考えていると、瞼に力が入る。それでは眠りは訪れない。

 瞼の力を抜いて、意識を遠くへ追いやる。

 このまま、虚のような透明に滲もうか。

 

 やがて透明は、黒に溶ける。

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