第3話「とある小説家の結末」
とある小説家の遺作となった「とある小説家の結末」、まるで死を予期していたような作品はその不可思議さも相成って何度も重版が掛かる作家最大のベストセラー作品となった。太宰 治の「人間失格」をオマージュしつつ、作品は結ばれる。
「あの人の編集者、そう私が悪かったのですよ。無理矢理、あれを書かせたんです」
何気なさそうに、そう言った。
「私達が好きだったあの小説家は、とても純粋で、よく主人公の心が読めて、あれで『神の視点』からの描写が出来れば、いいえ、それが出来なくても──まさに神様みたいな素晴らしい作家でした」
「これは、自分のことを書いているんですかね」
「さあな、それは、本人にしか判らない。描写を見る限り、そう疑わざるを得ない部分も多くあるが」
「でも、自分が感じていたこと、そのままなんですよね。最後の台詞」
「それは、皆が感じていたことさ。僕含めて、ね」
「なら、何故書かせたんです? 主人公が死ぬ話を」
「必要があると、思ったからさ。──あらゆる意味でね」
- Fin -
とある小説家の結末 愛知川香良洲/えちから @echigawakarasu
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