一章エピローグ~俺、ロリコンになりました~(52話)
……あれから一ヶ月ほどの時が流れた。
苦しみの魔王が滅びたとはいえ、奴らは草食動物のような生き物。
頂点が死ねば、他の奴が頂点を取る。ただ、それだけだ。
相変わらず、人類の劣勢は続いていて、俺のバッジは銅バッジから黒バッジへと転落し涙目である。
人類を救ったとか、そんな事は関係ない。世界を改変するような魔法を一個人が持っている事に、お偉いさんが危機感を感じているのだろう。
発動すれば誰だろうが確実に殺す異常な効果。そんで、苦しみの魔王の発言から見るに……この魔法を使える奴は、俺以外にはいないように思われた。
誰でも使える魔法なら、魔族連中がバンバン使いまくって酷い事になっているはずだし。
……まぁ、今はどうでもいいか。俺だけが使える切り札だと思えば格好良いしな。
それよりも共同墓地でのお墓参りが優先だ。遺体が残らないダンジョン世界では、葬式業者が遺族より涙を流して、オオーン!っと嘆き悲しむ姿がたまに見られるが、故人を偲ぶための施設はちゃんとある。大きな石造りの建物の壁に、ズラリッと死んだ人の名前を刻み込むのが、悪徳都市での墓地だ。
一人たったの100万円。生前に契約する事もできて、お得だ。スペースも取らないし。
「お師様~。この大きなお墓に……ドナルドさんやお祖父様の骨も魂もないですよね?」
「白……お墓ってのは死んだ人のためにあるんじゃない。俺たちみたいに生きている奴のためにあるんだ」
「はぁ……大人の事情って奴なんですかね?」
「まぁ、そんな所だな……」
俺の隣には、元気すぎる白がいる。今は白いワンピース姿だ。
清楚でエロ可愛い銀髪ロリ娘が一緒に学校に通って、毎朝、弁当を作ってくれて最高である。周りからロリコン黒バッジとか言われて馬鹿にされたが、俺は気にしない。
なんと言われようが、こんなに良い女を他の奴にプレゼントするくらいなら、ロリコンの蔑称くらい、いくらでも受けてたってやる。
「白、こういう時は両手で手を合わせて、故人へ祈るのが常識なんだぞ」
「なるほど、そうですか……お祖父様、ドナルドさん……あの世で幸せに暮らしてくださいね。
お祖父様はやっぱり、僕が尊敬できる最高のお祖父様でした。魔王殺しって大英雄っぽい名称で格好良いですよね。あ、花がないのは寂しいですし、ちょっと近くから花をとってきます!」
そう言って、白が風のように共同墓地を走り抜け、去っていった。銀髪はプラチナのごとき美しさであり、天使のような精錬さと、ゴリラのような積極性……将来、どんなにすごい美女になるのか楽しみである。
きっと、すごいオッパイに育つのだろう。夢とロマンの塊だな。オッパイはただの脂肪ではないのである。
だから、俺は祈ってやる。ドナルド先輩に。アンタが最後の最後に、自分を犠牲にして時間を稼いでくれたおかげで……白は生き返った。感謝をいくらしても足りないくらいだ。
遮断装置がぶっ壊れて劣勢になったのは、9割方、ドナルド先輩とバトルしていたせいだが、それでも感謝できる。おれは両手を合わせて冥福を祈ってやる事にした。
「ドナルド先輩……あの世でゆっくりしてくれ。ブラドさん、アンタのおかげでかわいい孫娘を守れたぞ。
俺はロリコンかもしれんが、大事にするからな……というか、俺はロリコンじゃないし……。たまたま好きな娘がロリだっただけだから……ロリコンじゃないんだ……。
というか、エロ可愛すぎるだろ……なんだよ、あのオッパイ……毎日、我慢している俺って偉すぎるだろ……。パフパフして欲しいなぁとか、白のオッパイをみると思ってしまうんだぞ……ブラドさんの家系、エロ可愛い娘が絶対多いだろ……」
「確かに、ブラドさん、アンタは良い人だったね、ロリコンのトモヤ君」
なぜか隣にドナルド先輩が立っていた。死人ではない。ちゃんと肉の器があるオッサンである。
相変わらず、茶色のスーツは皺だらけで、本人から人生に疲れたサラリーマンという雰囲気が伝わってきた。幽霊ではない……?なぜだっ!?
「先輩っ!?なんで生きてるんだ!?綺麗さっぱり魂ごと消滅してただろ!?」
「さぁ、なんでだろうね。さすがの僕も魔王の攻撃には耐えられないはずなんだけど、なぜか生きてたよ。ほら、壊滅していたはずの米軍が死んでない事になったし、どういう訳か、僕が死んだという事実が修正されちゃったようだねぇ……気づいたらマインドクラッシャーを魔王めがけて、また撃ってたし……。
いやはや、世の中は不思議な事ばっかりだよ……」
「つまり……苦しみの魔族を身体に宿したままって事ですか……?」
「そういう事になるかなぁ……まぁ、全部どうでも良いんだけどね」
「はっ?」
「自分から破滅しようとするのは、前向きな生き方じゃないし止めておく事にしたよ。今はそうだなぁ……白ちゃんみたいな素直で強くて可愛い娘でも見つけて、家庭を作りたいねぇ」
「白はやらんぞ!」
「ははははは、あの娘は君にゾッコンみたいだからさ。寝取ろうとしたら面倒臭い事になるし、手を出す気はないよ?本当だよ?」
「でも……快楽の魔族の手先であるという事実は……変わらないんですよね?」
「なんだかんだ言って、快楽の魔族は比較的平和だし。低コストで腐敗を浄化できる民主主義を気取っているし、快楽の魔族が勝利した方が利益になると思うから、僕はこのままグダグダ過ごす事にするよ。
あ、警察に通報しちゃ駄目だよ?この都市は腐っているからね。酷い目に会いたくないなら、どうか僕を見逃してよ。大事な白ちゃんを……守りたいだろぉ?」
「……」
「それじゃ、さようならだ。白ちゃんと幸せになってくれよ」
先輩はそう言って、この場から去っていった――次に出会った時、また殺し合う関係に戻っているかもしれない。俺は白を守れれば、人類そのものはどうなっても良い。そう思える。
苦しみの魔王が暴いた記憶が確かなら――俺は即席クローン人間の可能性が高いのだ。人類を守るために生産された道具。
だが、俺は一人の生きた人間だ。人類が俺を使い潰そうとするならば、魔族に寝返っても良い。
問題点があるとするならば――
「お師様ー!お花見つけましたよー!なんか高そうな花ですー!なんか口があってネズミとか食べてましたよぉー!」
俺が愛した小さな女の子は、正義馬鹿なんだ……俺が魔族陣営に寝返ったら、彼女が敵になってしまうだろう。無邪気で可愛くて度胸が凄くて、あと、持っている花が、なんか大きくてウネウネ動いて、花の中央に牙がズラリッと並んでいる。そんな植物を白が持っている――
「それは魔物だぞ!?誘導弾(イヴァル)!」
俺の魔力の弾丸は、花を模した魔物を一撃で粉砕した。最近、毎日、白とチューしているおかげで、無詠唱の魔力弾の威力が激増してすごい。
特に怪物の弱点部分を攻撃しなくても、貫通して倒せるのだ。
しかも倒せばゴールドアップルが出てくる雑魚ではなく、メロメロンという超高級メロンが出てくる魔物相手でも、この威力である。
「わぁー!美味しそうなメロンが出てきました!これをお墓の前で食べましょう!きっとお祖父様が喜んでくれますよ!決して、僕が食欲を抑えきれず食いたいとか、そういう訳じゃないんです!」
「ああ、そうだな……白が幸せだったら、ブラドさんも大喜びで天国で踊っているだろうさ……」
俺がそう言うと、白がメロンを地面においた。最近の彼女は魔氷剣で包丁を作り出して、それで調理する事が多い。武器の平和利用ができる銀髪ロリはそうはいないだろう。
だが、料理の前に、白が可愛く片目を瞑ってウインクして――
「あ、そうだ、お師様……僕の初めてを奪って、毎日チューしているんですから……ちゃんとセレブにしてくださいね?これを言うのをずっと忘れてました!
責任を取らなかったら、指の骨を全部折りますよ!」
こうして俺は
ロリコンになった。
一章 おしまい
吸血姫はアホ可愛い!・ω・`) @parume
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