お父さん、お寿司食べたい

結葉 天樹

お父さん、お寿司食べたい

「お父さん、お寿司食べたい!」


 日曜のお昼時。

 長男が唐突にそれを口にした。

 それに続いて次男、長女が「僕も」「私も」と言い始めた。


 駄目です。


「何でー!」


 駄々をこねても駄目です。


「食べたい食べたい食べたい!」


 ジタバタしても駄目です。


「おねがーい、おとうさーん」


 そんな可愛い目でおねだりしても駄目です。


「もう、いいじゃないのお父さん」


 妻よ、貴女もですか。


「お父さん、僕この間の運動会でかけっこ一等だったよ!」


 む、ご褒美作戦ですか。

 これは不利だ。


「僕もこの前の算数のテストで100点だった!」


 息子よ。立派に育ちましたね。

 お父さんは嬉しいです。


「えっと……わたしは……わたしは……」


 さあ娘よ。

 どんな手で来る。


「……あっくんに『すき』っていわれた」


 待ちなさい。

 それはそれでちょっとお話があります。

「あっくん」とは誰ですか。


「あら、良かったわねー」


 妻よ。


「じゃあ僕、今度のサッカーの試合で点を取るから!」


 む、前報酬作戦ですか。

 どこでそんな手段を覚えたのですか長男よ。


「僕は明日の国語のテストで50点取るから!」


 次男が釣られてしまった。

 その前に待ちなさい次男。

 苦手な教科だからと言って50点はあまりに目標が低いのではないですか?


「えっと……えっと……」


 さあ娘よ。

 どんな手で来る。


「きょう、おとうさんとおふろはいる」


 娘よ。

 それは反則です。


「いいじゃないの。皆、こんなに食べたがっているんだから」


 やれやれ。

 負けました。


「やったー!」

「わーい」

「おっすしー、おっすしー」


 喜んでくれて何よりです。

 お腹いっぱい「お寿司」を食べるんですよ。




 そんな訳でお寿司屋さんに到着です。

 幸いすぐに席に座れました。

 子供たち。

 他のお客さんに迷惑にならない様にするんですよ。


「何にしようかなー」

「僕決めた」

「わたしもー」

「私も」


 さあ、頼みなさい。


「たまご!」

「ステーキ!」

「ハンバーグ!」

「じゃあ、私はサラダ」


 子供たちよ。

 妻よ。

 お寿司とは何ですか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お父さん、お寿司食べたい 結葉 天樹 @fujimiyaitsuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ