スシ・ホライズン

@kuronekoya

チョウシの街から鮮魚をたくさんもらったので

「今日の夕食は寿司にしますかニャ」

「おおっ! 寿司祭り祭りだぜ!」

「直継兄、それは祭りがかぶってるよ」

「まあ、まあ、それではセララっち、ミノリっち、手伝ってくださいますかニャ?」

「「はい! 喜んで!!」」

 シロエは(どこのブラック居酒屋だよ?)と心の中で突っ込むがさすがに声には出さない。

「主君、私は手伝わなくてもいいのだろうか?」

「ああ、アカツキと五十鈴はサブ職業的にやめておいた方がいいだろうね」


 やがて出来上がった寿司が卓上に並べられた。

「いっただきま~す!」

 皆の声が重なる。

「トウヤ! マグロばかり食べない!! イカも食べて!」

「五十鈴! ルディにかっぱ巻きも食べさせて!! 2貫!」

 30秒先まで5貫単位の「全力管制戦闘(フルコントロールエンカウント)」でミノリが各種寿司の減り方をコントロールする。

(へえ、ミノリもなかなかやるようになったなぁ)とシロエは心の中でその成長を褒め称えた。

(もっとも、アカツキや直継のスピードには追いついていないようだけれどね)

 ニャン太班長がバランスを取ってくれてはいるものの、明らかに直継とアカツキのテーブルの寿司の減り方は偏っていた。


(まあ、もしもここにカナミが乱入してきたらこんなものじゃすまないだろうけど)

 と、ひとりごちたシロエが珍しく動揺した。

 いつの間にかシロエと直継の間にちゃっかりとカナミが座っていたのだ。

「おや、カナミさん、お久しぶりですニャ」

「私、好きなものだけもーらい!」

「ちょ! カナミさん!!」


 レベル40のミノリでは戦線の崩壊を食い止めることはできなかった。

 そしてそこには、料理人スキルを持つカナミの手で作り変えられたちらし寿司が残された。

 もちろん、高級なネタは一切れとして残ってはいなかったが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スシ・ホライズン @kuronekoya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ