return:California
宇白真江
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均質、均等に敷かれた舗装体は、青魚製の鈍く輝くネタを表面に有した押し寿司ハードウェアで構成されていた。アガリのように濁った曇天の下、その無機質の官能を宿す地面は、寿司の発祥地と伝えられる聖都カリフォルニアの神秘性を殊更に示威するものであった。
しかし、今や聖都は蹂躙され、舗装体は度重なる破壊により捲れ上がりシャリを露にしている。炙られ収縮したネタと、それを覆うシャリの姿は皮肉にもかのカリフォルニア・ロールの肖像に他ならない。
海苔とシャリを反転させた高次元構造体。ネタを接続する受容体であるシャリを表面に展開することで、シャリ同士で結合しネットワークを構築する拡張性を備える万能基。この破壊がそれを模すこともまた必然と言える。
数十世紀もの歴史を有するこの地と民を諸共に炙り、タタキにした存在は、他でもないカリフォルニアの知性なのだから。
海苔の軛を脱したカリフォルニア・ロールは際限なく拡張を続け、シャリで接続されたあらゆる表層は押し寿司で覆われた。押し寿司ハードウェアは、十数世紀をかけて地球を銀の大地に変えた。
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その瞬間、永らくワサビと醤油を欠いたハードウェアは腐敗した思考を算出し、地表を巨大なカリフォルニア・ロールと再定義した。シャリは地球と接続し、地殻変動の入力に出鱈目な結果を出力する。
そして今は――カリフォルニア・ロールの定義を満たそうとしている。
カリフォルニア・ロールは表層にシャリを配し、内部をネタで満たされなくてはならない。
太古とも呼ばれうる遠い過去に設定されたプロンプト。地表に存在する全ての物体はネタに変換されていく。
人工衛星から投下される鉄火巻の質量が重力加速度というガリを得て、多種多様な風味に溢れた文明を無味の更地に変える。
板前の命令さえ受け付けなくなった押し寿司は、やがて宇宙をもネタで満たそうとするだろう。食す者の消えた世界に、ひとつの寿司が残るのだ。
return:California 宇白真江 @ushiro_mae
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