α7「エピローグ」

 誘拐の事実を告白した男性の周辺を当たるとこちらの予想通り、彼女の誘拐に関わったという別の人物は存在した。匿名を条件に取材を行い、さらなる情報を引き出して来たのは自分ではない。しかしベテランでなければ聞けないような部分まで踏み込んでおり、むしろ別の記者に任せてよかったと思えるほどだ。

 特報面を二面に拡大して掲載された記事は読者に大きなインパクトを与え、それをきっかけに他の新聞社やテレビ・週刊誌などもこの内容を大々的に取り上げた。日本新聞協会、民放連がコメントを発表したほか、国会でも言及されることになる。ネット上でのマスコミ批判には拍車が掛かる結果となったが、自己批判を含む記事を掲載した愛東新聞に対する評価自体はトータルで考えると高まっている。


 大きな特報面の一角、記名記事の一つで私、妙見 晴香は書いた。


マスコミの一員としての、批判


 四年前、我々マスコミは過ちを犯した。その過ちが一人のあどけない少女の人生を壊した。元々は別の記事を書くつもりで、彼女の自殺について調べていたのだが、そのきっかけが無かったら未だに彼女は貶められていただろう。


 彼女の所在が判らない。ごく初期の報道ではそれだけの情報しか存在しなかった。当然のように我々は彼女を疑った。ここまではまだ、正常といっても差し支えないだろう。しかし否定する材料が出た時点で止めるべきだった。それをせず、我々は彼女が犯人のように報道し続けた

 我々は過ちを二つ犯した。容疑者が逮捕された後、彼女についての報道はばったり無くなった。それが、彼女への疑いを残す結果となり、それが彼女の境遇を厳しくした。


 我々マスコミは反省しなければならない。形だけの反省をした所で、こういった事例は起こってしまうだろうが。


 最後に、取材に協力してくれた関係者に敬意を表して。


(α・終)

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トクホウ 愛知川香良洲/えちから @echigawakarasu

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