第5話 「カーニバル IN フォーレ」

この店は私が入店当初、正直かなり暇だった。


そもそも200~300人を収容できるキャパを持ち、


常時100人前後のキャストが勤務する大箱店だ。


そのうえ、10分1,100円で飲み放題の明朗会計。


指名料は2,000円前後だったと記憶している。


これだけのキャパを有している場合、並大抵では利益は出しにくい。


当時、このキャパで、この従業員人数では

最低満卓で2回転しないと、店の採算が取れないと聞いていた。


2回転で満卓となると、お客さんは大体500~600近く呼び込まなければならない。


なのに、入店当初は空席もちらほら目立ちながらの

2回転回っているか回っていないかという状態だったので、間違いなく赤字だったろう・・・。


こういう暇な状況は、キャストにも悪影響を及ぼすため、

士気が下がり、仕事も当然いい加減になり、仕事が雑になる。


入店時、常務に

「半年でこの店をNo1にします」


とは言ったのの、この現状を見た時は、

正直、到底無理で、実現不可能と思い、心底後悔したものだ。


でも、言ったからにはやらないといけない。


さて・・・どうしたものか・・・。


私はとりあえず1週間、働きながら店の様子を観察した。


店では、平日は1日2回、金・土・祝日前日3回のトップレスショーがあった。


このショーに出れるのは、指名上位でかつトップレスショーが可能な子。


皆が衣装を脱いで、トップレスでお立ち台に上がって、

90年代にディスコ等でよくかかっていたユーロビートに合わせ、

ゆっくり回りながら、くねくね踊るだけのごくごく単純なものだった。


ここで、あることに気づく。


本来、「ショー」がある店の場合、メインは「ショー」になってくる。


なのに、この店の場合、「ショー」はあくまでもおまけ状態なのだ。


ならば、この店でそれをおまけではなく、

メインとして目玉にできれば、何かしらの突破口が見えるのではないか?


しかし、そうするなら、何をすればいいのか?


おまけであるトップレスショーを、メインの領域まで持っていける秘策・・・。


「賭けてみるしかないな・・・」


私は反則技とも言える秘策を思いつく。


正直、反則技には多少の躊躇はあった。


だが、ここで突破口を開かない限り、先は見えない。


私は思い切って、部長と常務に掛け合い、ショーに出してもらえるように頼んだ。


彼らにはショーで何をするかは伝えずに・・・。


さて


丁と出るか?


半と出るか?


全ては私のショー初日に決まる・・・。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ButterflyEffect~1993年バブル崩壊直後のススキノに1人のキャバ嬢が旋風を巻き起こす~ 瑞城(みずき) @mizuki_f

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ