第10話 これだ!

小泉純一郎首相が誕生しました。地方の自由民主党党員により投票される

総裁予備選挙で圧倒的な支持を受けました。本選挙で形勢を逆転させ、首

相になる可能性がないと判断して、他の議員は総裁本選挙を辞退して小泉

純一郎総裁が誕生し、小泉純一郎議員が首相に就任しました。そして、田

中真紀子外務大臣も誕生しました。どうも田中真紀子議員は、外交と社交

の区別がなく、甘く考えているように思えました。私は田中角栄元首相が

嫌いですし、田中真紀子議員の外務大臣就任を苦々しく思いました。私が

田中角栄元首相を嫌う理由は、ロッキード事件にあるわけですが、特にロ

ッキード裁判にあります。他の議員等は次々と有罪判決が確定される中、

演繹法、帰納法に照らして考えれば中心人物の田中角栄元首相が無罪であ

るはずはありません。金と権力さえあれば、有罪を無罪にでき、国民の支

持を失うことはなく、その権勢を振るい続けることができるを立証したこ

とが、田中角栄元首相を嫌う理由です。その後、田中角栄元首相のように、

利益誘導を行い、外交上の功績を上げれば、有罪を無罪にでき、国民の支

持を失うこともないと信じて、日本の内政においては目茶苦茶な利益誘導

を行い、外交においては国交正常化を無理に進めるあまり国益を無視した

政治家(金丸信と北朝鮮、鈴木宗男とロシア等々)が次々と生み出される

ことになりました。マスコミも北朝鮮寄り、ロシア寄りに報道することが

あることも政治家の”ご都合”に何らかの影響を受けているからではない

かと感じていました。そして、手のつけようがないほどにマスメディアが

報道と称する騒動を起こしました。真紀子フィーバーだか純ちゃんフィー

バーだか知りませんが、マスメディアも世間も良く騒ぎました。視聴率や

販売部数がとれるから騒ぐのでしょうが、報道番組までがワイドショーの

ような騒ぎ方にはあきれてしまいました。小泉純一郎首相の政策とか田中

真紀子外相の外交構想とかで騒ぐなら理解もできますが、ひたすら期待と

憶測、政治とは無関係な言動で騒ぎ立ててました。しばらく騒ぎは収まら

ないようでした。この影で報道されずに、忘れ去られていくニュースがた

くさんあるのだろうなと苦々しく思いました。支持率も発表され、80%

以上の支持率でした。支持率が低いよりは良いですが、報道機関が伝える

ニュースはどうでも良いような内容のニュースばかりで、一体何を見て、

大多数の国民は支持を決めているのか理解できませんでした。


そうこうしていると、2001年5月、テレビであるニュースが飛び込ん

できました。金正男らしい人物の身柄が一時拘束されましたが、田中真紀

子外務大臣の計らいで、中国経由で北朝鮮に、送還されたというニュース

でした。金正男らしい人物が拘束されると、人出国管理局員がどのように

して金正男と断定したのかについて疑問に感じました。人出国管理局が金

正男の身体的特長を把握しているとは思えません。人出国管理局員がどの

ようにして金正男と断定したのかについて報道がされないまま、金正男と

して扱われていることに違和感を感じました。この違和感は以前感じたこ

とがある違和感に似ていることに気が付きました。2000年11月に重

信房子の身柄が当局により拘束されたことを思い出しました。重信房子が

逮捕されたとき、ニュースで見た重光房子にはかつての凛とした女闘士の

面影は全く無く、すっかりオバサンになっていることに感じた違和感に似

ていると思いました。はじめは、なんとなく同じようなニュースが続くも

のだなと漫然と思いました。この違和感は何なのか、すぐには分かりませ

んでした。時間が経つにつれて、この2つの違和感が整理され、結びつき

ました。1つ目の違和感は人出国管理局が手配している重信房子の写真と

は似ても似つかないオバサンを女闘士の重信房子として逮捕したこと、も

う1つの違和感は人出国管理局が身体的特長を把握していない金正男の身

柄を確保したということです。人出国管理局員というのは、私もときどき

海外旅行ぐらいは行きますが、入出国ゲートに貼り付けてある手配写真の

古さといったら、これは無いだろうというぐらいに古い、何十年も前の写

真を平然と貼り付けて、何十年間も何も感じない間抜けで、鈍感な人間達

の集まりです。しかも、私の記憶では、入出国管理局員が、このような手

配写真により身柄を拘束したというニュースは聞いたこともありません。

その後もありませんし、今後もないと思います。つまり、入出国管理局員

が顔を見ただけで、身柄を拘束できる管理体制にないということです。顔

以外に、入出国管理局員がチェックするのはパスポートだけです。何度か

不法に入国していることからパスポートから識別することはできないのだ

と思いました。私が感じた違和感は、人出国管理局員が見ただけでは判別

できない人物を間違わずに識別できたということでした。入出国管理に変

更がなく、過去にできないことが実現したと考えるなら、今までにはもた

らされることがなかった正確な情報が入出国管理局に伝えられたのだと感

じました。


さらに調べてみようと思い、インターネットで検索をかけました。いろい

ろなホームページが引っかかり注目の高さがうかがえました。そのうちの

あるホームページを閲覧していると、金正男や重信房子はエシュロンによ

るメール盗聴が元で当局に確保されたという内容が書かれたページを目に

しました。その瞬間、「これだ!」と悶々と抱え込んでいた違和感と共に、

一変に違和感が解消しました。これなら金正男や重信房子の身体的特徴が

把握していなくても、人物を識別することはできると思いました。搭乗予

定の便名や使用する偽名を入手できれば、たとえどんな間抜けで、鈍感な

入出国管理局員でも身柄を拘束することは可能だとも感じました。解消し

た違和感はこれだけではありませんでした。私のメールアドレスに対する

執拗な追求もメール盗聴目的であるとすれば、違和感が解消しました。さ

らに、1通程度のメールでしかやり取りをしていない、初対面の人間が私

を意識していることは、既に盗聴が行われ、利用されていることが伺えま

した。畜生やられたと思いました。情報収集と監視目的のために私のメー

ルから情報を入手する目的で、個人で使用しているメールアドレスを入手

したのでした。とんでもないことをやってくれるなと思いました。ほんと

うにやることが汚いと思いました。これでは私は何の情報のコントロール

もできませんし、私とメールを送受信する人々に対しても、危険が及ぶと

思いました。そして、リングという映画を見たときに感じた恐怖感と同じ

ような恐怖感をエシュロンに対して感じました。普段何気なく、誰もが使

用しているVTRテープ、電子メールが死、盗聴という不安、心配、恐怖

を人知れずに伝播し、仲介するというところがそっくりでした。エシュロ

ンは、エシュロンで盗聴されているメールアドレスからのメールを受送信

するだけで、盗聴される可能性があると思いました。盗聴されているメー

ルアドレスに送信したメールには、送信先の既に盗聴されているメールア

ドレスだけでなく、送信元のまだ盗聴されていないメールアドレスが記載

されています。もちろん、盗聴されているメールアドレスから送信したメ

ールには、送信元の既に盗聴されているメールアドレスだけでなく、送信

先のまだ盗聴されていないメールアドレスが含まれています。エシュロン

はメールアドレスさえ分かれば盗聴可能なのだから、盗聴できなかったメ

ールアドレスでも芋づる式に盗聴可能になると思いました。そして、人知

れず、どんどん盗聴可能範囲を拡大できると思いました。実際に盗聴され

るかどうかは、政府の都合次第であると考えられました。逃れるための方

法はインターネット等のIP通信からの隔絶しかないとも思いました。い

つでも、どこにでもエシュロンの監視の目や耳があり、エシュロンにプラ

イバシーを奪われ、エシュロンにコントロールされているという状態はマ

トリックスという映画に似ていると思いました。監視にはある程度慣れて

いるとはいえ、ショックで気が狂いそうになりました。もしかしたら、気

が狂ったのかもしれません。こちらが気が付いたことには気が付いていな

い、親姉妹、ジョージ・ウォーカー・ブッシュ米国大統領、小泉純一郎首

相、福田康夫官房長官、東哲郎現社長、栃折早敏現部長、武田光哉現部長

代理、永田政也長代理、石坂敏夫GL、松田克彦、菅原正弘、中間和久、

石川雄彦及び、これらを取り巻き、支援している人間の顔を見るたびに救

いようのない政治家、官僚、企業経営者、従業員で構成された社会である

ことに打ちひしがれ、絶望させられました。

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原作「エシュロンキラー」 @norick007

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