シャリの大冒険
まめあじ
第1話
「やーい、お前の母ちゃんカリフォルニアロール〜!」
僕はあの日からずっと考えている。
母さんはどうしてカリフォルニアロールになったのか、そして僕はこれから何になりたいのか。
ある朝、僕は自分探しの旅に出ることにした。
「いいネタありますか?」
八百屋のおじさんに聞いた。
「キュウリだろ、カッパ巻きが一番」
「いや、そういう普通のじゃなくて」
自分探しの旅に出てカッパ巻きになって帰ったら、笑われるに違いない。
「じゃあ今流行りのこれは?」
おじさんは僕の頭にパクチーを乗せた。
「わぁ、お洒落!ありがとう」
僕は嬉しい気持ちで歩き出した。
「いいネタありますか?」
お肉屋のお兄さんに聞いた。
「スパムとか、ありがちのじゃない方がいいよね」
お兄さんは察しがよかった。
「これなんかどう?」
タレで焼いた上ミノを乗せてくれた。
「ありがとう!大人になった気分だ」
僕は興奮気味に店を出た。
「いいネタありますか?」
パン屋のお姉さんに聞いた。
「パンは同じ炭水化物だからねぇ」
お姉さんは困った顔で答えた。
「焼きそばパンも炭水化物同士ですよね?」
僕は粘った。
「じゃあ寿司パンでもいい?パンになっちゃうけど」
お姉さんは冗談ぽく答えた。
「なるほど、それは困る」
寿司じゃなくなる、という選択肢は僕の中にはなかった。
「ありがとう。方向性が見えてきた気がする」
そう言ってパン屋を後にした。
だんだん日が暮れてきた。
「まだパクチーと上ミノしか見つけられてないや」
少し不安になっていると、近くの家から楽しそうな声が聞こえてきた。
窓から中を覗くと、みんなで楽しそうに手巻き寿司を食べていた。
僕ははっとした。
ネタは自分じゃなくて食べる人が決めるんだ。
食べる人が喜んでくれるなら、ネタは何だっていいじゃないか。
僕は旅を終えることにした。
例えどんなネタが乗ろうとも、僕はそれを受け入れようと思う。母さんがそうしたように。
シャリの大冒険 まめあじ @matty0321
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