故郷の寿司食べたい

柚木山不動

東京の寿司が気に入らないわけじゃないんだ

 次の帰省時には玄界灘の荒波で育った新鮮な魚が食べたい。豊後水道の激しい水流にもまれて育った魚も格別だ。


 醤油しょうゆはもちろん九州醤油。あの甘みが魚の旨さを引き立てる。


 丸々と太ったアジ。包丁を入れると断面が盛り上がるほど張りのある艶々つやつやとした身。握り寿司なら、上に切れ目を入れて小口切りにした小葱こねぎを散らし、おろししょうがを添えて一口で食べたい。


 刺身でも食べられるほど新鮮なサバ。ゴリゴリとあたり鉢ですった胡麻ごま・醤油・酒・味醂みりんで作った風味の良い漬けダレに、鯖の切り身を半日ほど漬け込み作った「ごまさば」。茶碗に軽くよそったご飯の上にごまさばを乗せ、刻んだ大葉を散らし出汁をかけていただくのが王道だが、手巻き寿司というのもなかなかに乙なものだ。巻いてる時にも胡麻の香りが食欲をそそる。パリパリとした有明海産の海苔の食感と香りがごまさばの風味と相まって口の中に広がる。これもまた良し。


 甘い口どけの烏賊イカ天麩羅てんぷらはゲソに限る。そのゲソ、薄めの衣をまとい、金色の胡麻油に降り立つべし。ネタが投入後、揚がっていくにしたがってパチパチとはぜる音が高く変わっていくのもたまらない。握り寿司なら身が厚い甲烏賊コウイカが良い。表面に細かな切れ込みを入れておけば、表面がつるつるした烏賊でも醤油が良く絡む。山葵わさびを多めに利かせるのが良い。


 その名の如くキラキラと輝く太刀魚タチウオ。旬の時期なら丸々と太って、むしろ丸太のような存在感だ。でかした!飾り包丁の入った皮目を炙った表面からたっぷりと漂う脂の香りも上品だ。脂なのにあっさりしている。握り寿司もいいが、押し寿司も捨てがたい。スダチを絞ってかけると柑橘系の香りが広がり、より一層楽しめる。ありがたい。


 タイ海老エビ蝦蛄シャコ、旨い海産物はまだまだあるが挙げていけばキリがない。



 ああ、ふるさとのすしがたべたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

故郷の寿司食べたい 柚木山不動 @funnunofudou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ