かくれんぼしましょうよ。
桜狐'
プロローグ
彼女が目を覚ましたのは、辺り一面大きな木に囲まれた薄暗い場所であった。
森か雑木林か又は神社や寺か最悪山の中。
何処であっても、気味悪いのには違いない。
ーー何処かしら。
そう思案するのも一瞬、東から風が吹いた。
急な風が吹くと目を瞑ってしまうのは人間の本能なのか、彼女は反射的に瞼を力強く閉じた。
止んだ風の跡を追いかけるように目を開くと、湿った地面に影が伸びているのが見えた。
「あ、貴方は...」
「やあやあ、そんなに警戒なさらんな娘さんよ。」
「此処...何処よ!」
「気のお強いことで...。此処は主様の神聖なる地ですぞ。其処に貴女様がおいでになられたので、主様もさぞかし喜んでおることでしょう。」
「そんな覚えはないわ。」
「まあまあ。それでは、この辺で。」
「ちょ、ちょっと!!」
水干姿で尾を生やした者は、にやりと笑って風の如く去って行った。
ーーこれから、どうしようか。
少し歩いてみよう。そう思って立ち上がった時、何かにぶつかった。
それは、彼女の持っていたカバンだった。
ーーこれは...
彼女は、何かを思いついたように口角を上げ、目を細めた。
かくれんぼしましょうよ。 桜狐' @cheriblo_fox
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