さらば伝説の勇者よ

雅島貢@107kg

第215章:そして勇者は姿を消した

Epilogue

最後の決闘

 シャリィィ――…………ン。

 純白の穀物のような音を立てて、剣が吹き飛ぶ。剣はそのままガリ、と音を立てて岩肌を削る。

「さすが、おトロえないな。そんなかサバる装備で、良くも……」

「いや、兵タイ長もすごかった。一歩間違っタラバ、危なかった」

 兵タイ長、と呼ばれた男は、かブリを振って自嘲気味に嗤ってツブやく。

「ハ! マチがっても『危ない』なんてことはないだろウニ」

「ふふ。最後くらいは勝たせてあげてもいイカ、なんて思ったんだけど。イクラなんでも、そんなシャコう辞令みたいな勝ちは、いらないだろ」

「ああ、そうだな。まったく……これでも一念ホッキして、修行したんだがな」

 二人は見ツメあう。

「それで? 本当に『帰る』のか。『帰れる』保ショウガあるって言うのか?」

「サー? モンだいは山積みだ。でも――僕は『帰ら』なくちゃあ、いけない」

「……サビしくなるな」

「ああ。僕もサビしい」

「だったら! ここに残ればいい。まタコれからも、王国で暮らせよ! そしたら何もかも思うがママ――カリもまだ、返していない。俺のな」

「たしカニ。ここに残ればカレイなる人生を歩めるかもしれない。でも、僕はそういうタチじゃあない。それに」

「ナットくイカないな」

「どうしても――『帰り』タイ理由があるんだ」

「ちっ。シンコくそうな顔をするな。君にゃア、ワビしい顔は似合わない。君ニシンみょうな顔をされると――困る。分かったよ。あタマゴなしに止めるのは、やめるさ。せいぜい、『帰る』前にくたバランようにな。さよならは、言わないぜ。こういう時は、君の世界ではなんて言うんだったかな?」


 二人は声を揃えて言う。

「「おあいそ」」

 そうして声を、揃えて笑う。悲しみを包み込むように。海苔が柔らかなタネを、やさしくあたたかく、包み込むように。


 異世界から訪れ、世界を救った少年は、こうして歴史の表舞台から姿を消した。

 彼がどうしても元の世界に帰りたがった理由は――誰も知らない。

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