親方と弟子。

arm1475

寿司のイノベーション。

「親方ァ!」

「なんでぇ、朝から騒々しい」

「俺、また新しい寿司思いついたんですが試食してくださいませんか?」

「新しい寿司ぃ?」

「へぇ」

「……お前。そんな事言ってこないだチョコ寿司とか俺に食わせやがったよな?」

「あれはあれで美味かったでし痛たたた耳引っ張んないで」

「この抜け作がぁ! 美味ぇだ? あんなモン客に出せる訳ねぇだろが!」

「……だって最近カップ焼きそばで大人気じゃ無いですが」

「そういうのは他人に出す前にまずてめぇの口で味見してからいいやがれ。……ったく、シャリにチョコ乗せたどころの騒ぎじゃねぇ、シャリの粒ひとつひとつチョコでコーティングするとか何、無駄に手間かけやがって。……ああもう思い出したくも無ぇやアレは」

「うーん、駄菓子にライスチョコがあるから若い連中にイケると思ったんですがねぇ」

「……はあ。俺はなぁ、お前の才能を見込んで、新しい寿司を考えてみたらどうか、とは言ったが、なんでそう斜め左下に斬新過ぎるんだ。

 で、今日の失敗作は何だ?」

「親方ぁ……食う前から失敗とか言わないでくださいな。これです、寿司の新しい可能性を見つけました」

「……」

「どうしたんです」

「……何だ……この」

「この?」

「……イヤ、何となく判ったと言うが……どうやって作った?」

「まず握ったトロを新鮮なうちに凍らせます」

「凍らせる」

「次に凍らせたソレを牛乳と一緒にミキサー入れます」

「牛乳と一緒」

「あとはスイッチを入れるだけ」

「やっぱり」

「親方、何ですその怖い顔」

「……俺ぁなぁ、新しい寿司を作れと言ったんだがな」

「いやぁ、斬新でしょ、飲む寿司」

「……お前、スムージーって知ってるか?」

「やだなぁ、寿司ですよ寿司。親方、訛ってます?」


               貫

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