戯曲 寿司横恋慕

AranK

第一幕 政略結婚

おお、トロよ。桃色さす麗しきその肌よ。

許されるならば、今すぐにでもこの両腕シャリに、このシャリにそなたをいだきたい。


ああ、ササニシキ。精悍たるそのつややかなまなざし。

許されるならば、今すぐにでもそのシャリにわが身をゆだねたい。


野に咲くガリよ。われらの運命に涙せよ。

大地を流れる番茶よ、われらの嘆きを流しされ。

この世界が、おおこの世界こそが、二人の寿司を阻む。


なにゆえに、ああなにゆえにトロよ。そなたは天然ものとして生をうけた。

なにゆえに、ああなにゆえにササニシキ。あなたはいまだ古米ならぬ新米なのか。


ササニシキ。ああササニシキ。

この身はたとえ人のものとなろうとも、あなたへの想いは終生変わらない。


トロよ。おお、トロ。

知らぬシャリに抱かれるそなたを思うだけで、わが身は嘆きで張り裂けんばかり。


われら二人の間には、もはやワサビひと塗りさえも入る余地はないというのに。

生まれというしがらみが、あの憎きコシヒカリをそなたの前に現れさせた。


神よ。運命よ。

なにゆえに、ああなにゆえに。



かの者がしゃしゃり出ることを許したもうたのか。



おあとがよろしいようで。

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