寿司バトル

告井 凪

寿司バトル・マグロVSタマゴ


 夜、ビルの屋上。ロングコートの男と女子高生。

 二人の手元には、寿司。


「恐れろ! 黒鮪の赤身ブラッディ・ブラックダイヤ!」

「見惚れなさい! 黄金色の玉子焼きシャイニング・メシア!」


 職人が握った寿司は気を纏う。纏った気のぶつかり合い、それが寿司バトルだ。


「伸びて、海苔の一刺しブラック・ニードル!」

「ぬるい、魚骨の大盾ボーン・イージス


 タマゴから伸びる黒い帯の気が、巨大なマグロの気に防がれる。


「くらえ、魚群の咆哮ドレッドノート・キャノン

「あっ! 輝く美しい黄身イエローシャイニー!!」


 マグロの気が大きな口を作り、大砲のように塊を吐き出す。

 対してタマゴは光り輝く気の壁で、塊を完全に打ち消した。


「何故、俺のマグロを狙う?」

「あなたが! 最強だった父さんの甘エビの鮮度を奪ったからよ」

「それが寿司バトルというものだ! サビ抜きの子供にはわからないだろうがな!」

「子供扱いしないでっ! ワサビくらい……!」


 気を纏った寿司は鮮度を保つ。寿司バトルは相手の鮮度を奪う戦いでもあるのだ。


「では見せよう。マグロの姿を!

 黒鮪の中トロブラックダイヤ・ジェネシス!!」


 マグロの赤身が桃色に輝く。中トロに進化したのだ。


「ふ、ふふ。進化できるのはあなただけじゃないのよ!

 ! 黄金の唐揚げゴールデン・ルナティック!!」


 タマゴが炎を上げる。

 から揚げ寿司に進化し、高熱の気の塊が飛び出した。


 ぺし。


 が、中トロの気に触れた途端地に落ちた。


「えっ……?」

「愚かな。折角のタマゴを何故揚げた」

「から揚げが美味しくないって言うの?!」

「から揚げは旨い! だがそれは、!」

「あっ……!!」


 中トロの気が爆発的に大きくなる。


「俺が食べたいのは、回らない寿司だ」

「……私は……」

「から揚げは定食屋に帰れ!」


 中トロが鮮度を奪う。から揚げは冷えきってしまった。


「私は定食屋の娘だから……から揚げを……」

「から揚げは温め直せばまた食える。帰って、親父さんと食うんだな」

「うぅっ……!!」



 戦いは終わり、男はマグロを見つめる。


「食い時だ。お前と共に食う寿司を探そう」


 男は職人の寿司を求めて、夜の街に消えた。

 

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寿司バトル 告井 凪 @nagi_schier

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