回転すし

綿貫むじな

スシはまわる

 回転しながら飛来する。それが回転スシだ。

 何時スシが地球上に回転しながら飛来するようになったかは定かではない。スシはものすごい勢いで回転しながら地球に突き刺さる。

 スシは災厄であり、また恵みでもあった。


 大抵のスシは大気圏突入の際に燃え尽きるが、たまに突き抜けてくるスシもある。大抵そういうのはネタ、シャリのどちらかのサイズが大きいのだ。

 大きすぎるスシは地上に海にぶつかった瞬間物凄い衝撃を、傷跡を残す。

 しかしスシは表面部分が焦げていても中身は大抵無事だったから、地球上の生物たちは寄ってたかって餌として食べ、それによって徐々に彼らは数を増やしていった。

 人間も例外ではなかった。


 しかしある時、ばったりと回転スシは飛来するのを止めてしまった。

 人々は宇宙からの恵みが途絶えた事を嘆き悲しんだが、来ないものは仕方がない。

 であるなら、自分たちでスシを、シャリを、ネタを高速回転させ、また別の同じように高速回転させたスシとぶつけて新たなスシを作ろうと考えた。そうすることによってスシエネルギーが充填されて次々とスシが作られる永久機関になる。人々は熱狂し、実験を繰り返した。

 およそ一万年前の話である。

 

 狂気の実験はついに成功を見せた。

 新たなネタが誕生したと思った人々は実験場の中に踏み込んだが、しかしその中はがらんどうだった。スシの影の形もない。

 スシは一体どこに消えたのだろう? 


 回転スシのみがそれを知っている。

 自らを回転させて悠久の時を駆け巡る、ただそれだけを存在意義として。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

回転すし 綿貫むじな @DRtanuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説