夢
いくま
何かを探して
寂れた街の上、傘を片手に飛んでいる。オレンジ色の街灯と、大きな月が道を照らしていた。
今日はやけに遠くまで来たなあ。
降りた場所はその街1番のデパートの屋上。
ここの中だけ妙に賑やかで、仮面をつけたお客たちが買い物を楽しんでいる。
ポケットに入れていた携帯が震える。電話だ。
『もしもし』
“春の訪れ 煌めく緑 揺れる青…"
不思議なメロディーに乗って聞こえた言葉。きっとヒントのつもりだ。
全く、ヒントを出すくらいなら答えを教えて欲しいもんだ。
そう呟いて1番下の階まで降りる。下の階に行くにつれて人気がなくなっていく。品物も少なくなっていく。上の階と打って変わって、1番下の階には誰もいなかった。上から降ってくるお客たちの楽しそうな声が不気味に思えた私は、棚に並んでいたパンを1つ手に取り、デパートの裏口からそそくさと外へ出る。
デパートの裏には、道を挟んで大きな湖があった。
反対の岸が見えないほど霧がかかっている。
厚く、濃い霧。そこに映っているのは首長竜の影。
月の光を浴びに出て来たのだろう。首を高く伸ばしている。私はパンを食べながらそれを眺める。綺麗だった。
数分で再び湖底に戻る首長竜を見届けて、パンを食べ終えた私は傘をさす。
ぴょん、とジャンプして浮かぶ体。
私は、飛んでいる意味もわからないまま次の目的地へ向かう。あのヒントを頼りに。
夢 いくま @kicho_ikuma
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