最終話 読者が嫌いな欝展開

 俺はその言葉の意味が、すぐには理解出来なかった。


「えっ、お前何言ってるの? だって普通、最初に世界観を説明する女神様が出てきて、ついでに言葉の説明とかしてもらえるよね。で、大人のまま転生するよね」

「私の時には全然誰も出てこなかったよ」

「えっ? じゃあ、君は気がついたらいきなりここだったの? 何の説明もなしで?」

「違うの? みんなそうだと思っていたのに。じゃあ、他の転生者は言葉を身に着ける苦労をしなかったというの!?」

「してないよ、そんなの。それこそ飽きられるじゃん」

「うわ、許せない! 私なんか、身体は赤ちゃんで、頭は大人だったのに!! そんでもってお父さんに大股開おおまたびらき見られまくって、どんなに死にたいと思ったか知れないのにい!!!」

 獣耳女盗賊が泣きわめく。それを全員がしらけた顔で見つめていた。

 ――こんな風じゃなかったのにな。

 俺は小さく溜息をついた。

 元々は非常に仲のよいメンバーだった。

 ――何しろ、俺のところに日替わりでやってきては、


 *


(作者註)

 以降、カズマの回想が延々と続くわけであるが、それを逐一表現してしまうとR十五指定やR十八指定が必要になるので、作者としては自主規制せざるをえない。

 各自で「二十五分かける十二話分」ほど、妄想して頂ければ幸いである。

 なお、この作品がめでたくアニメ化された場合、ここに赤裸々な映像が差し込まれる予定である。

 そうだ、そうに決まっている。


 *


 ――だしな。

 俺はDVD六巻分、十二話に相当する長い回想を終えて、やっと我に返った。

「うわ、最低」

「見損ないましたわ」

「下種ぅ、もう知らないぃ」

「あのわたしはめいどですからそのくらいのことはぜんぜんかまわないわけですけれどもえいぞうかされてこうかいされるのはちょっとどうかなと」

「……」

「ZZZZZZ――」

 いや、待て。

 だからどうして表現されていない俺の回想部分にまで反応する?

 というか、ここは本来、会話文じゃないのか?

「いいじゃんそんなの」

 言いわけないだろ!

 どうせぇ、こんなお話なんてぇ、誰も読んでいませんわぁ。

「だあっ、地の文で会話するのは止せ!」

 地の文って、なんですのん?

 なんだよ、お前一体誰だよ? しかも何で関西弁なんだよ?

 ふふふ、わ・た・し(ハートマーク)

 文字で書くな!

 記号で出せよ!


 つーか、これじゃあただの尺稼ぎじゃないか!!


 *


 その時、カズマ達が混乱した様子を世界の向こう側から見つめている者がいた。

(ふふふふ、俺だよ、俺)

 彼は笑いが止まらない。

(カズマ、もうお前は飽きられているんだよ。ご都合主義の無茶な主人公補正。下種な性格設定なのに、お約束に従って美女をやすやすと獲得する。しかもあれやらこれやら好き放題やりやがって。そんなお前に、みんな飽き飽きしているんだよ。というより、俺が、だけどな)


 作者は唇を歪めた。


( 終わり )

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これだけは知っておきたい異世界転生の新常識(これ新) 阿井上夫 @Aiueo

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