明日また、笑って、
登場人物
・尾崎 花菜(オザキ カナ)
ガサツにしてるけど内面は女っぽい。
久遠とは幼馴染で家も隣。
久遠が好きだけど久遠の恋を
応援したいと思っている。
・菊池 久遠(キクチ クオン)
明るくて誰にでも優しい人気者。
花菜を大事な家族と思っている。
家も隣同士。
心に入学式の時に一目惚れした。
・笠間 心(ケセマ ココロ)
おっとりしてて女の子らしい性格。
花菜とは親友で大事に思っている。
花菜の幼馴染の久遠を
密かに気になっている。
私、尾崎 花菜は、小さい時から
隣の家の菊池 久遠と遊んでいた。
木登りしたり、かくれんぼしたり、
ゲームしたり、家にもお泊まりした。
私はずっと久遠のことが好きだ。
けど、私達の関係はいつのまにか
大事な家族のようなものになっていた。
それでもいい。
久遠にとって私は1番の存在だから
いつかこの気持ちを伝えるときがきたら…
それまでこの関係を大事にしたい。
花菜はそう思っていた。
しかし高校生になったある日「相談がある」と言われ
久遠の家に行った。
「俺、好きな人ができた!」
は?
目の前には目をキラキラさせた久遠。
「だ…誰?」
「笠間 心ちゃん!」
次の日。花菜は分かりやすく落ち込んでいた。
「花菜ちゃん、どうしたの?大丈夫?」
心は心配そうに花菜の顔を覗き込んだ。
心…
心は私の親友だ。
優しくて思いやりがあって
背が低くて女の子らしくて可愛くて
すごくすごく良い子だ。
そんな心を久遠が好きだなんて…
「ありがとう心。ちょっと朝食べ過ぎただけ」
心と私は高校に入学して席が前後で
すぐに仲良くなった。
私にとって1番の男友達は久遠で
1番の女友達は心だ。
大好きな2人が恋人同士になったら
私も嬉しい、けど…
ガラッ
「おい花菜!数学の教科書貸して!」
久遠が私達の教室に入ってきた。
久遠は中学生になってから急に身長が伸びた。
昔から明るくて誰にでも優しい性格だから
モテるようになった。
教室がざわつく。
久遠は迷うことなく花菜の席に来た。
「また忘れたの?仕方ないな〜アイス奢りね!」
「昨日も俺ん家でアイス食べてたよな?太るぞ!花菜ブー!」
久遠は鼻に手を当ててブタの真似をした。
「ふざけんな!オラ〜!」
花菜は久遠の腕をポカポカ叩いた。
久遠はわざとらしく痛がるけど笑っていた。
あ〜好きだな〜。
「二人って、本当に仲が良いよね!」
心がひょこっと出て来た。
「けっ笠間さん!?」
久遠は分かりやすく顔を赤くして驚いてる。
「笠間 心です!いつも花菜ちゃんにはお世話になってます!」
「心、それ可笑しいから」
「花菜ちゃんの幼馴染なんだよね?いいな〜私も花菜ちゃんと幼馴染が良かった〜」
「いや、こいつなんて幼馴染というより弟みたいなもんっすよ」
弟…
胸にグサッとくる。
こうやって見てみると、
久遠と心はすごくお似合いだ。
久遠は私には見せない表情をしてるし、
心は…
「花菜ちゃん!聞いてる?花菜ちゃん!」
心は花菜の目の前で手を振ってる。
考え事をしていたらいつのまにか放課後だ。
「ごめん、聞いてなかった、何?」
「久遠くんと初めて話したけど面白い人だね!優しいし、」
心は柔らかく微笑んだ。
きっとこれから久遠と心はすごく仲良くなる。
心を見る限り、久遠に好感を持っているし、
話しているのも楽しそう。
二人が付き合ったら、
私の想いはどこに行くんだろう?
心の中にずっと居続けるのか、
それともゴミ箱にでも捨ててしまうのか。
ピロリン
メールだ。
携帯を見ると久遠からで「俺ん家に寄って!」の文字が。
「ごめん、心。私これから久遠の家行かなきゃだから帰るね」
心に余裕が持てなくて
少し低い声で言ってしまった。
「そうなんだ…楽しんでね!また明日」
心は変わらず笑顔で返すけど
どこか寂しそうだった。
私のバカ。
心はきっと久遠を好きになりかけてる。
それに気づいて、傷つけることを言ってしまったんだ。
小さい時からずっと久遠のことが好きで
久遠のことなら誰よりも知ってるし理解してる。
誰よりも近い距離にいたのに、
高校で出会った心が全てを持って行った。
心は親友なのに、
黒い気持ちがザワザワしてる。
花菜は足早に久遠の家に向かった。
「お邪魔しまーす、久遠〜!」
「よ、待ってたぜ!」
久遠はリビングのソファでゲームをしていた。
花菜はその隣に座った。
「何?心のこと?」
平常心でゲームのコントローラーを持つ。
「ああ。俺さ、今日心ちゃんと話してさらに好きになったよ」
「心ちゃん」、いつのまにか名前で呼んでる…
「それで?アドレスでも聞いて欲しいの?」
「いや、告白する、明日」
心臓が一瞬止まった。
コントローラーを持つ手が震える。
声が出ない。
「へ、へぇ〜…いいじゃん」
多分、顔、笑えてない。
「どう思う?お前的に?心ちゃんって好きな人いたりする?」
心臓が痛い。うるさい。
「心に別に好きな人がいたらどうする?」
意地悪な事を聞いてしまった。
素直に応援できない。
心も久遠のこと好きかも なんて言えない。
私は久遠の幼馴染失格だ…。
「それでも告白するよ。そしたら何か変わるかもしれないし、心ちゃんに他に好きな人がいても、俺にチャンスが回ってくるかもしれないじゃん!」
私は、何も言えない。
「実はさ、付き合いたいとかよりも、この気持ちをとにかく伝えたいんだよね」
久遠の話を聞くと
入学式、心は桜を見て泣いていたそうだ。
一緒にいた子がハンカチを出して「どうしたの?」と声をかけると
「すごく綺麗だね。」とクシャっとした笑顔で答えたそうだ。
久遠はその心の純粋さに一目惚れした。
私は桜を見て泣けない、素直に「綺麗だね」なんて言えない、
周りから笑われるのが嫌で
男っぽく振舞って
久遠との関係が壊れるのが怖くて
告白もできない。
「久遠…」
「ん?」
「私、久遠のこと大好きだよ。家族のように大切で、幸せになって欲しいと思う。」
例え、幸せにできるのが私じゃなくても、
「応援するよ、久遠の告白。絶対に上手くいく!花菜ちゃんが保証するぞ!」
花菜は立ち上がって仁王立ちをした。
「久遠っ!いつもありがとう!頑張れ!」
可愛く言えないけど、
精一杯の笑顔で。
ギュッ
!?
久遠は花菜を抱きしめた。
少しだけ震えている。
「…ありがとう、花菜、お前最高だよ」
久遠は次の日、心に告白した。
ベタな校舎の裏で。
その後、心に呼び出されて
付き合うことになった報告 と
あることを聞いてきた。
「花菜ちゃん、本当は久遠くんのこと好きだったんじゃない?私ね、花菜ちゃんがすごく大好きだから、そしたら久遠くんとのこと…」
花菜は心の頬をつねった。
「ううん、久遠は家族みたいなもの!すごく大切な人。…心も同じくらいすごく大好きな人だよ!」
心は泣いていた。
綺麗な涙だった。
久遠が惚れたのも分かる。
「あ!久遠だよ!ほら、一緒に帰りな!」
「ありがとう、花菜ちゃん、また明日!」
心は久遠の元へ駆け寄った。
2人の姿が見えなくなると
花菜は泣き崩れた。
大好きだよ、久遠。
家族としてじゃなくて、恋人になりたかった。
叶わない恋はどこに行くのかな?
この気持ちを風船に括り付けて
久遠にも心にも気づかれない
遠い街まで飛んでいって。
_end_
恋読。 kumori @kumori_666
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