恋読。

kumori

春になっても、会いに行くよ。


登場人物


・阿部 衣織 (アベ イオリ)

高校三年生

一年生の時から瑛太が好き。

意地っ張りな性格なので

素直になれない。


・上島 瑛太 (ウエシマ エイタ)

高校三年生

衣織のことが好きだけど

友達関係が長いため

なかなか告白できない。






私、阿部衣織は同じクラスの上島瑛太が好き。


瑛太とは一年生の時に同じクラスになって

いつのまにか1番仲良い男友達になって

いつのまにかすごく好きになっていた。


春からは別々の大学…

このまま離れ離れなんてヤダ!


よし!



「瑛太っ!」


「んー?何ー?」


宿題中の瑛太。


衣織は瑛太の前の席に座った。


「あのさ…瑛太って好きな人、いるの?」


「はあ?何いきなり」


瑛太は片眉を上げて笑いながら言った。


「いいからっ!答えろっ!」


なんで私は、可愛く言えないの〜。

いつも自分の言ったことに後悔する私。


瑛太はノートから目を離すことなく答えた。


「いるよ。お前はいるの?好きな奴。」


「いっいるよ!瑛太よりもカッコいい素敵な人!」


バカ、そうじゃないでしょ。

瑛太のことすごくすごく好きなのに

また意地を張ってしまう。




一年生の時の席替えで瑛太の後ろの席になった。


身長が高い瑛太と身長が低い私。


瑛太の頭で黒板がよく見えなかった。


「あの〜上島君…少し頭下げてくれない?」


「ん?何?」


「黒板が見えにくいんだよね。わたし元々書くの遅いから余計に時間かかっちゃって…」


瑛太は後ろを向いて私の書いてるノートを覗き込んだ。


「ふーん、あ、字綺麗だな」


その一言がすごく嬉しかった。


「そうかな?あんまり自分の字って好きになれないんだよね」


「俺は阿部の字、好きだよ。」


それから私は瑛太と自然と仲良くなって

瑛太を「異性」と意識するようになった。




瑛太とのこの三年間の思い出は

沢山ある。


帰り道一緒になって

桜並木を通って帰ったり。


夏祭りで偶然会って

瑛太の友達と私の友達と、みんなで

花火を見たり。


体育祭で瑛太が走ってる時

声が枯れるほど応援したな。

一緒に写真撮りたかったけど

結局恥ずかしくて言えなかった…


喧嘩も沢山したな…けど瑛太は優しいから

いつも先に謝ってくれてた。



私はいつも素直になれなくて

瑛太が傷ついてしまうようなことを

沢山口走ってしまった。


「好き」たった二文字が、

その二文字が どうしても言えない。






目の前には当たり前のように瑛太がいる。


当たり前がいつか、春になると、

当たり前じゃなくなる。


私は。



私は。





衣織は瑛太の筆箱からボールペンを取った。


そして、瑛太の書いている紙に



「ちょっ…落書きすんな、よ」




「好き」の二文字を書いた。




絶対、今顔赤い…



「気づけ…バカ瑛太」



衣織は恥ずかしすぎて顔を上げられない。


視界には瑛太の手が見える。


瑛太はゆっくりと手を動かして

シャーペンで何かを書いた。




「俺も」と。




嘘…。



瑛太を見ると耳まで真っ赤になっていた。



「お前が気づけ、バーカ」



夢みたい、



「…春からは別々じゃん、大学…」



瑛太はそっと衣織の手を握った。


「会いたくなったら言えよ、すぐに会いに行くから。

でも俺が会いたくなったら、お前すぐ来いよ?」


真剣な顔をした瑛太。


今まで瑛太の気持ちが全然分からなかったのに、

今はすごく伝わってくる。


衣織は瑛太の握った手をつねった。


「痛っ!」


「ふざけんな!べっ別に会いたくないしっ!」


「相変わらず素直じゃないな〜」


余裕そうに笑う瑛太。


もっと可愛いこと言えたら良いのに

私のバカ!バカ!


衣織は自分の席に戻ろうと立ち上がった。


「待って!」


「な、何よ…」


心臓がドキドキ言ってる。






「お前さ、ボールペンで書いたな?これ宿題なんだけど、消えねーじゃんか」



「あ…」




消えない「好き」の二文字が

これからの2人を応援してくれている。




衣織と瑛太は宿題に書かれた

「好き」を見て笑った。





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