第6話ヨシヲと睡眠と悪霊封印
「ヨシヲ君落ち着いて、レベルが上がっても睡眠をとらないとステータスは上がらないんだよ。」
今にも死にそうな顔をしている俺に気付いたのか山出は慌てて声を掛ける
「今のステータスは1レベルのステータスだからクソステでも気にする事はないよ。とりあえず今日はもう寝て明日ステータスをもう一度確認してみようよ。」
さりげに今クソステって言わなかったかな?もしかして普通の人より弱い?まあ現代人で普通の人間である俺のステータスが高い訳ないわな。でももし明日起きて“うわっ・・・私のステータス低過ぎっ!”って状態だったらと思うと怖くて直ぐに寝付けないかもしれない....
そんな事考えながら頭を悩ませていたら、他の3人はもう寝てしまったのか静かになっていた。
ってかね。いきなり野宿でテントも無しとか寝られないでしょ!寒くはないとはいえちょっと小雨パラついてるし!例えそれが普段気にならない程度の雨粒な上、森の中だから滅多に当たらない程だろうけども、やっぱりほんの少し濡れたり地面が湿るだけで体温を奪われるから更に眠り難い環境なのは間違いない。むしろ皆どうやって寝てるのだろうか?
参考に出来ればと思い立ち、とりあえず探してるうちに焚き火の火が消えてしまわない様に薪を追加で投入して、辺りを探ってみる。
すぐ近くに丸まった人影が見える。こんなシルエットの人はいただろうか?そちらの方に近付いて行く。周囲は暗くなっているが焚き火の灯りがあるので真っ暗という程ではない。近付いて見るとだんだんと見えてくる....魔法使いの帽子?田中か?だがちょっと待て....こいつの帽子こんなに鍔の部分広かったか?
明らかに不自然にデカくなった帽子の下で、座るのに程好い感じの切り株の上に腰掛けたまま足を閉じて足の上に手を置き、背中を丸めて頭を少し下げた状態で眠る田中がいた。確かにこれなら濡れないが....何も持っていない俺には何かの上に座る事と、身体を丸めて体温を保つ事以外は特に参考にはならなかった。
更に近くの木のそばに薄緑色の目立つ色合いのローブが暗い中でも見えた。
(山出だな....)
今度はそちらの方に近付いて行く。明るい色をした山出のローブは嫌でも目立つ、山出は頭にフードを被り、地面に体育座りをして木に背中を預けながら寝ていた。....んっ!?よく見るとこいつのローブ、ローブじゃなくてウインドブレーカーなのか!?常日頃からウインドブレーカーとか暑過ぎだろ!もしかして意外とアウトドア好きなのかもしれないな....
山出の新しい側面に驚きつつも最後の一人がどこにも見当たらない事に俺は気付いた。パンイチ、奴め....どこかに隠れて眠っているのか?遠くには行ってないはずだ!
寝ることも忘れて焚き火を中心にパンツ一丁のおっさんを探し始める俺。気になる....裸同然の奴がどの様にして安眠を得ているのか!?それこそ俺の求める快適な睡眠の答えではないのか?
暫く探していると、マントの四方を地面に刺した枝の先にに結び付けた....一見背の低い日除けの様な文明らしき痕跡と遭遇する。このマントは間違いなく探していた原始人の物だ。奴はこの近くにいる!
マントの日除けの中を覗くと細い竹筒が地面に突き刺さっていた。これ、もしかしてあれか?地面に潜ってあの竹筒から息をしてるのか?いやいや、流石に奴でもそこまで人間辞めてないだろう。いろいろ思案しながらマントをどけて竹筒に耳を近付けてみる俺
(土の中、暖かいナリィ〜)
微かではあるが、何か聞き覚えのある声が竹筒から聞こえた気がしたが気の性だろう。俺はおもむろに足元の砂を拾い上げ、手の中で固めてから
「
と誰にも聞こえない様な声で竹筒の入口を静かに砂の塊で塞いだ。もしかしたら....もしかしたら悪い悪霊が竹筒を介して寝ている仲間を襲うやもしれない!そう、これは必要な処置だ。これは必要な処置なのだ!
自分を納得させ、その場に残った悪霊のマントを拾い上げると、背を預けるのに程好い木の下にマントを敷き、その上で体育座りをして眠ることにした。
ふと今日1日あった事をいろいろと思い出して不覚にも一人で笑いそうになる。最初は右も左も分からずどうなるものかと思ったが、今は何だかうまくいきそうな気さえしてきた。後は明日レベルが上がってどう変わるかであるが....
「まあなるようになるだろ....」
そう呟いて目を閉じた
勇者ヨシヲと導かれし色物たち〜 ジョナさん @sar-dine
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