第5話 ヨシヲと職業とレベルと効果

 どこにでもいる平凡な見た目の平凡な高校生だった俺ことヨシヲ。なんやかんやで異世界で勇者をやることになった訳だが、俺は遂にこの世界での自分の価値を知る事になる



 パンイチの異常な能力は置いといて、この世界で普通に弱いモンスターに殺される人はあまりいないらしい....というのもこの世界ではレベルが上がり易く、すぐにステータス強化出来てしまう為、冒険者以外の一般人も割と戦えてしまうのでモンスターに対する危機意識は低いらしい。


「....パネェ」


 俺が森で拾った程よい木の枝で、一角ウサギを2羽程狩っている間に、山出さんの周りは既に動物愛護団体にはお見せ出来ない光景が広がっていた。俺とパンイチが馬鹿やってる間にもくもくと倒していたようだ


「この人、本当に魔法使いかよ....」


 もう何十羽倒したのかも判らない....あまりの手際な良さに驚いている俺に田中が話し掛ける


「そう言えばヨシヲ君はこの世界の職業やレベル、ステータスについてはあまり知らないんじゃないかな?レベル上げが一通り済んだら一度説明した方がいいかもしれないな。」


「是非お願いします。」


 そんな俺達を横目にいつの間にか復活したパンイチはモンスターからのドロップアイテムを選別していたのだが中には『こん棒』とか『革の鎧』とか明らかにウサギが持てない様な物まであった。


「こんなに持てねぇしいらねぇなぁ....」


「いやいや、いらないならくれよ。ってかドロップ明らかにおかしくないっスか?」


「俺が参加する時は大体こんなもんだけど?」


 どういう事かは解らなかったが俺はとりあえず『こん棒』と『革の鎧』を貰い受け装備することにした。他には『キメラのつばさ』や『5円チョコ』や『うまい棒』など価値があるのかないのか判らない物まであったが、パンイチの選択肢的には重い装備よりも軽い物を選択するらしい。....理由は聞かないッ!


 日が暮れ始め、辺りが暗くなり始める頃に俺達は森の中の程好い広さのある場所を見付け、野宿の準備を始めていた。俺はウサギを5羽しか狩れていないが疲れでヘトヘトであったが、山出はウサギを狩りながら血抜きと内臓を処理しつつ運び易い様に太い木の棒に後ろ足を縛り付けて戦っていた様で、今は田中と二人でウサギが大量にぶら下がった棒を担いでこちらに向かって来ていた。パンイチは集めた薪で焚き火の準備をしており、俺は冒険者としての経験の差を強く感じていた。


「さて、どこから話そうか。」


 一頻ひとしきり準備を終えると田中は俺の近くに座り、先程言っていたこの世界のレベルやステータスの説明をし始めた


「まず最初にステータスから話そう。ステータスには『力』『守り』『知力』『素早さ』『精神力』『運』があり、順に攻撃力&筋力&HP総量、防御力&環境適応&HP総量、魔法の威力&魔法防御力&MP総量、攻撃までの早さ&回避、ステータス異常防御&回復・補助魔法効果&MP総量、会心率&被痛恨率&ドロップ確率&ギャンブル当たり確率。おおまかにはこんな感じかな?

 次にレベルだが冒険職に就いていない者にもレベルはあり、これを一般職と呼ぶ。レベルは職業ごとに99までレベルがあり、99までレベルを上げるとマスターと呼ばれる。更に99まで上げると職業に応じたステータスにボーナスが付くんだ。ちなみにだが我々は皆1つ以上は職業をマスターしている。」


「ステータスボーナス?例えばどんなボーナスが付くんですか?」


「戦士を例にあげるなら、まずレベルの数字だけ『力』に+加算される。『力』が“10”でレベルが“5”なら『力』が“15”になる。もし99レベルまでいけば最高値の255まで成長し、更にレベルの99分が加算され、装備無しで最大354の攻撃力になる。ちなみ99までレベルを上げて例えば戦士をマスターにしたとする。すると他の職業に就いて1レベルから始めても『力』は255のままなんだよ。ちなみに商人や農民、執政官や役人などは一般職と呼ばれ『守り』が高い。勿論99レベルなら255まで上がり99レベルなら農民でも商人でも単純に354の防御力を持つことになる訳だ。」


 ここまで話を聞いてなんとなく山出やパンイチの魔法使いになる前の職業に察しがついた....

『力』が戦士で『守り』が一般職。なら残りの『知力』は魔法使い。『素早さ』は武闘家。『精神力』は僧侶。『運』は遊び人になるのが妥当だ....

 つまりは“戦士”と“遊び人”。なるほど、どうりで山出は細身の癖に出鱈目に強く、パンイチはやたらドロップアイテムを遊ばせてる訳だ。しかしそうなると....


「私は僧侶をマスターしてるよ、ヨシヲ君。僧侶系の魔法は全て使えるしステータス異常には余程の事がなければなる事はないから安心してくれ。」


 これまでの話から職業とステータスを考察して二人の職業は確信に至っていたが、肝心の田中の職業が判らず、探る様にして田中の顔を覗き込んでいた俺に気付いたのか、田中は笑顔で期待していた以上の答えを返してくれた。そして俺は思い知らされた。俺が一番使えない奴なのだと....


 先程狩ったウサギを1羽づつそれぞれ焚き火で焼き今日の飯にした。食事をした後、俺は暫く呆として焚き火を眺めていた。すると珍しく山出が声を掛けてきた。


「お疲れ様〜。今日はヨシヲ君いたから張り切ってみたけどレベルはどれ位上がってたかな?」


 ―!!....そうだ!俺にもレベルがあったのだ!どうして今まで気付かなかったんだ!レベルが上がれば俺だって戦える様になるはず!


「今確認してみます!」


 山出はニコニコしながら待ってくれていた。ステータス画面を開く俺、見えたのは....


「....21レベル」


「凄い!20レベルも上がるなんて普通じゃないよ!ヨシヲ君、君はやっぱり本当に勇者なんだよ!」


 人の事なのに嬉しそうにしている山出に、この人は心底いい人なんだろうなと感じながら、自分のステータスに目をやり今度は愕然とする


「『力』5、『守り』5、『知力』1、『素早さ』3、『精神力』10、『運』6『HP』24、『MP』26....」



 ....嘘やん?



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