第4話 ヨシヲと棺桶

 どこにでもいる平凡な見た目の平凡な高校生だった俺ことヨシヲ。なんやかんやで異世界で勇者をやることになった訳だが、俺達は今金が無いので外に向かっている。無論モンスターと戦う為だ


「300Gってあり得ねぇしww遠足のおやつ代かよwww全く、勇者殿は大変なご使命を承りましたなぁ!」


 金も無く、仕事に就く事すら出来ないこの憐れな勇者に嫌味たらしいパンイチが無慈悲に煽る。我慢しろ、俺。街の外まで後少しだ!モンスターが出たら....いや、衛兵が見えなくなったらとりあえずそこら辺の石かやたら落ちてる『うまのフン』でこいつのオサレ眼鏡をまず叩き割ってやる!

 俺がパンイチに対する密かな殺意を燃やしていると田中が語り出した


「しかし王も人が悪い....これまでも王はよく悪戯をしたものだが、今回は外の世界から来た何も知らない人間をわざわざ城に連れて来させて騙しているのだから一層達が悪い。」


 田中の言葉で先程の状況を思い出す....

あの後田中が俺の現状と王様に半ば騙されて小学生の御駄賃ほどの全財産で武器や防具を買おうとしていた事を説明してくれたのだ。


「あぁ、そういう事か....兄ちゃんも不幸だったな。」


 武具店の店主がそう言って笑うと足を止めていた人達もそれぞれの方向にまた歩き出した。俺への無言の“ドンマイ”の視線と共に....

 八百屋の店主も何か察してくれたのか俺の肩を叩いて店の方を親指で指差してこう言った


「兄ちゃん。白菜買ってくかい?」


 いい笑顔でそう言う八百屋の店主....何察っした顔で言ってんだこいつ!その白菜俺の全財産と等価だからッ!!


 こうして田中....いや田中さんのおかげで俺の名誉とアリアッハ〜ンでの世間体は守られた。しかしその場にいた全員が俺の醜態は王の仕業と判ると納得し、励ましてくれたのだが、この国の王は一体これまでどんな悪戯をしてきたのか非常に興味は尽きないが、どうやら俺の死ぬまでに殺したい奴リストにこの悪戯好きの王も加えなくてはいけない様だ。ちなみにパンイチは今のところダントツ1位である


 話は変わるが、この街アリアッハ〜ンは意外と大きい。街を覆う外壁と更に街の中央に堀で囲まれた城。外壁を抜け街から出れば広大な麦や様々な作物の畑が広がっている。この畑がある一帯も幾つかの集落が存在しかなりの人口がいるようだ。必然とモンスターが出るフィールドまでは遠い....


「阿◯さん、この....


「田中だ、ヨシヲ君。」


 田中さんすまない。顔見ながら話すとどうしても阿◯寛を連想してしまい反射で阿◯さんと言ってしまう


「すみません田中さん。この辺りに出るモンスターはどんなモンスターが出るんですか?」


「ああ、外から来たから何も知らないんだよな?大丈夫だよ。ヘタレで装備の無い勇者様でも問題無く倒せる様な雑魚ばかりだよ。」


聞いてもないのにパンイチが答える


「まあ山さんが言う様に心配はないよ。私達もいるしね。」


 田中も同意してみせる。俺は旅人の服しか装備していないがなんとかなるらしい。まあパンイチで武器も持たない原人以下の奴でも生きられる位なのだからモンスターもそれ程じゃないのだろう


 畑を抜け俺達は森へ入る事にした。森といっても手入れがされてるのか木はあまり密集しておらず視界は開けている。

 森に入った事でテンションが上がったのか原人以下の存在が早速動き出した


「おい、勇者様。見ろよ!早速モンスターがいるぞ!」


 パンイチが指差す方向を見ると角が生えた愛らしいウサギが後ろ足で立ってこちらの様子を伺っていた。一角ウサギというらしい。

 だがちょっと待って欲しい。現代人にいきなり罪も無い愛らしい動物を殺せと申すか?むしろモフりたい位なんだが....


 俺が動物を殺す事に抵抗を見せているとパンイチは別の一角ウサギの耳を掴んで捕獲し俺に語りかける


「勇者よ、こいつらは非常に危険なんだ。普段は大人しいが興奮すると足に突撃してきて思わぬ重症を....(ガリッ


 説明しているパンイチの指にウサギが軽く噛み付いた。瞬間、パンイチは棺桶になった!


「うおおぉぉい!?パンイチが死んだ〜!?即死攻撃とか聞いてないんですけどぉ!」


 まさかの一撃死に気が動転する。だってウサギさん甘噛みしただけやぞ?それで人が死ぬとか生物兵器かよ!こんなん詰むわ!!

恐怖のあまり騒いでいると唐突に棺桶の蓋がずれ


「静かにしろやゴルァ!」


 中から白装束と頭に三角のアレ着けたパンイチが俺に切れる。割と余裕あんのな、お前


「なんだ、生きてたのかよおっさん。ビビらせないでくれよ。」


 なんでいきなり切れられたかは知らんが、とりあえず安堵していると


「いや、死んだよ。Aボタン押してステータス画面見てみ」


 パンイチのいうAボタンが何かは知らんがステータス画面を確認すると確かにパンイチは『しに』となっていた


「マジか!?おっさんスペラ◯カーか何かなの?転んだら死んじゃう儚い生命ですか?」


「う、うるせぇ!これだから素人はよぉ....野ウサギ病とか危険な病気もあるんだからな?野生の動物には十分気を付けろよ?」


 もう完全に棺桶から出て普通に話してやがるぞこいつ....そもそも野ウサギ病でも狂犬病でも即死はしねぇよ!ってかお前が一番気を付けろよ!あとよく考えたらかなり惜しかったんじゃないか?頼むからそのまま死んでてくれよ


「と、とにかくこの世界って死んでも割とユルいんですね。これなら安心して戦えそうですよ。」


俺がそう言うと山出と田中が首を振りながら


「ヨシヲ君違うよ」

「ヨシヲ君、そんなの山さんだけだから....」


と答えた


「じゃあ他の人が死んだら?」


「普通に死ぬよ」

「死ぬぞ」



異世界ファンタジー怖ぇ....

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