第11章 魔族の男 カルメン

「開けろー!!」


意識が朦朧とするなか、僕は地下牢の鉄柵にしがみ付き声を荒立てた。


「今すぐここを開けろよ!」


力いっぱい殴っても蹴っても鈍い音がするだけで開くことはなくただ自分の手や足が痛いだけだったがそれでも止める訳にはいかない。

村の人たちやルミーネ、アスタルテの事が心配で無力と知りながらもどうにかしたいと言う気持ちがからだを動かした。


「くそ!開けろって言ってるだろ!」


そんな気持ちも虚しく、ただ地下の空間に声が響くだけだった。


「くそ……」


自分の無力さに全身から脱力しその場に座り込んだ。

どれほどその体勢でいたのか分からなくなるかけていて時。


「もう終わったか?」


不意に後ろの方から声をかけられた。


「だれ?」


正直だれが居ようとどうでもいいと思いながら振り返ると、トカゲの姿をした二足で立ってる姿が目の前に有った。


「落ち着いたようだな、五月蝿くて寝れなかったぜ。」


渋い落ち着いた感じの声で話しかけられ戸惑いながらも取り合えずそのトカゲと向き合った。


「あなたは?」

「俺か?俺はここに捕まってる無実の民さ。」


大きい口を歪めそのトカゲは笑って言ったのだった。




「隣座っていいか?」

「どうぞ……」


脱力しながらも少しずれスペースを開けた。


「悪いな。」


そのスペースにトカゲは腰を下ろし深いため息をついた。

暫くの沈黙の後、ゆっくりとトカゲは口を開いた。


「そうだな、まずは自己紹介といこう。俺の名はカルメン・ヘンヴィン、見ての通りリザードマンだ。君は?」

「僕は結城 卓也、見ての通り人間です。」

「はは!冗談で返せるって事はまだ気力を失ってるわけじゃねぇんだな。」


何が楽しかったのか、カルメンは笑いながら僕の背中を叩いて来た。


「よし、タクヤよ。少しお互いの為になる話をしようじゃねぇか。」


少し怪訝な顔をしながら見つめ返すと、カルメンは再度大きな口をニカッと笑顔に歪め悪巧みを考える子供のような目で見つめ返してきた。


「取引だ、俺はこれでも魔族だ。」

「魔族……」


魔族と聞き少し身構えてしまった。それがカルメンにどう写ったか分からないが何も気にしていない様子で話を続ける。


「魔族って言っても今は何の力も無いただのリザードマンだ。魔族ってのは面倒でなお前らが思っているほど危険の存在でもねぇんだ。」

「どう言うことですか?」

「そうだな、簡単に言うと契約者がいねぇと本来の力が出せねぇんだ。」

「契約者ですか?」

「そうだ。主に魔力供給源としての役割を担ってもらうのが定石だ。昔は命を対価に契約するとか有ったらしいが、今は掟でそんなことをすれば一発であの世行きにされてしまうぜ。」


そんな掟があったのかと思いながらも話の続きを促す。


「だからな、今の俺は無力なだけなんだ。ここから出たくても力が出せねぇ。だからこそタクヤに力を貸して欲しいんだ。」

「それが嘘でない保証は?」

「ん?あぁ、そうか。君もガーウィルに騙されたんだったな。」


カルメンは少し考えるとまっすぐな目でこちらを見て。


「この屋敷を出るだけの契約って事でどうだ?」

「そんな事できるのですか?」

「まぁな。それとここを出れたらタクヤ、君がしようとしている事の手助けをしよう。」

「それは本当か!?」


僕はその言葉に食いついたのだった。

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異世界で過ごす僕の人生 ユウやん @yuuyann

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