第9話

 外には派手仕様のお隣さんと、ちょっとおどおどした痩せぎすの男がいた。


「あ、あの――まだ寝ている人もいるので、うるさくするのは、よくないと思いますよ?」


 2人に注目されて、俺もおどおどしながら言う。

 ちくしょ――神様め、こういうの苦手なのにぃ。


「そいつがわたしのあとを付け回してきたのよ。このストーカー!」

「だ、だって、付き合いたいって美穂ちゃん、言ってきたじゃないかぁ」

「それはお仕事メールよ! そもそも付き合おうって言ってきたのは貴方じゃないの! わたしは断ったわ!」


 ぐっと男は黙り込む。

 いや、大声は迷惑ですってば。

 そんなことをぼんやりと考えていた、第三者の俺だが、美穂さんと呼ばれたお隣さんのせいで渦中に巻き込まれることになってしまった。

 美穂さんはぐっと俺の腕に手を回し、


「この人彼氏! 同棲してるの!」


 えええー、なんでそんな結論に!?

 思わぬ修羅場に巻き込まれた俺は、ぎこちない笑みを浮かべるしかなかった。


 そのとき、俺の部屋の玄関のドアが開いた。あれ? 閉め忘れたっけ?


「そこまでじゃっ!」

「か、神様っ!」


 怪訝な顔の男と、美穂さん。そうか、状況的には女性に腕を回されて神様ぁ――とか叫んでる、危ない人にしか思えないぞ?

 困った俺の視線に気がついた神様は、にやっとした表情になり、男へ指先を弾くようなしぐさをした。遠くからのデコピン、みたいな?


「あの、僕なんでこんなところに?」


 痩せぎすの男は呆然として、俺と美穂さんに尋ねる。最初から、美穂さんの存在を知らないみたいに。


「ふっふっふ、妾の特殊能力じゃ」


 ものすごいドヤ顔で神様は笑ったかと思うと、その場に崩れ落ちた。


「あっ!」


 俺は神様にかけより、抱き上げる。

 怪訝そうな美穂さんには、


「こ、コンタクトレンズが落ちてました! 問題なくなったようなので、じゃっ!」


 といい、そそくさと部屋に戻った。

 なんとか、ごまかせたかな?

 ちょっと! とか美穂さん言ってたけど、それより神様が心配だった俺は、美穂さんを無視し、自分の部屋に入った。

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押入れの中のかみさま 三上 ロカ @filter

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