1-1、変わっていく心

 始めは友達だった。私と君は何でも話し合える友達だった。君の家族の話だって聞いたし、私の恋人の話だってした。でも、お互い忙しくて話す機会も減っていった。


 それから数ヶ月後久々に再会した。君は前よりも可愛いらしく、そして美しくなっていた。否、恋人に別れを告げられ傷心気味だった私にはそう見えたんだ。

 私たちはまた友達として話した。楽しかった。私は心の傷を君との楽しい話で勝手に埋めようとしていたんだ。


 ある日、君と二人で物語を紡ぐ遊びをした。登場人物は二人。私の分身と君の分身。私の分身と君の分身も友達だった。

 分身たちは本人たちよりも素直に話した。二人で紡いでいった物語はクリスマスのイルミネーションのようにキラキラと輝いていた。

 

 でも私は、気がついてしまった。気がつかなければ良かったことに。私は君に惹かれていたんだ。優しくて無邪気に笑う君に。

 分身たちは本体たちの意思とは別に動く。いや違う。私の分身がそうだっただけだ。君はどうだったかなんて分からない。でも、私はそれで良かった。私の中の黒くてドロドロとしたものを君には見せたくなかったから。この絆を無くしたくなかったから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

歪んだ愛の形 黒豹 @Jet_blackangel

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ