第2話特殊能力《ちから》

始業式から1夜開け、等々授業が始まった。

淡々と授業をこなす毎日になんの楽しみがあるのか。

それは分からないが、学校に来る理由なんてみんな、大体は勉強したいからでは無いはずだ。

部活が楽しいとか、友達といるのが楽しいとか、あとは、好きな人がいるとか。

(七瀬…今日も可愛いなー)

そう。好きな人がいるとかね。

友達と遊ぶなら学校なんて来なくてもいい。カラオケでもどこでも行けばいいんだから。

でも好きな子とはそうはいかない!

誘えばいいって言ったってそんな簡単じゃないでしょ?

みんなも経験あるでしょ?

こうして眺めていられるだけでも幸せ噛み締めちゃえるこの感じ。わかるかなー!

このためだけに学校はあると言っても過言では無い!能力万歳!Aクラス万歳!下のクラス行きたいとか言ってごめんなさい!

「次の部分を高岡読んでくれるか?」

「はい。」

高岡七瀬が席を立つ。それはごく普通に立っただけで、なんの変哲もない光景だったが、海斗にとってはとても煌びやかな物に見えた。

「この世界に、特殊能力を持つ子供たちが産まれてくるようになったのは、今から30年前の事である。突如飛来した巨大隕石が太平洋に落ち、地殻変動が起こった直後から、この現象は起こり始め、今では特殊能力を持って産まれてきた子供たちをよりよく導くために、専用の学校を建設し、見守っていく制度が作られた。」

突如訪れたこの現象は世界に衝撃を与えた。

初めて発見されたのはアメリカで、小さい物を引き寄せる程度の能力だったと言う。わかりやすく言えばサイコキネシス。

その後の調査により、その世代には他にも能力者が存在する事がわかり、研究と保護が行われた。

後に産まれてくる子供たちにも、世代を問わず能力を持つ者は存在し、その数は年々増加していった。

なぜ能力を持って産まれてくるのかは未だ分かっておらず、力が強くなる要因も分かっていない。

ただ確かなのは、能力を持つ者は持たぬ者よりも強いと言う事。時には兵器にもなる者であると言うこと。

管理しようとする者が出てくるのも頷けることである。

「見守っていくって…体のいい監視じゃねーか。」

そう監視だ。目の届くところに置いておけば危険にいち早く対応できると。ここはその為に造られた鳥籠の一つなのだ。

「都築、そんな事言うもんじゃない。この学校があるからいい事もいっぱいある。先生の時代はまだ能力者が認知されて間もなかったから、学校が無ければそれこそモロな研究所に叩き込まれてた。そうならなかっただけここがあって良かったと思ってるよ。」

そう。分からない事だらけの能力者は、科学者にとっては格好のモルモットなのである。

そのモルモットに人権を与えてくれているだけ、この鳥籠も素晴らしいところであることは受け入れなければならない。

今では普通に生活できるが、発見当初は酷かったらしい。

「それに、学校で能力の使い方に慣れ、幅を持たせられれば、将来必ず役に立つ。戦闘訓練だって、将来警察や自衛隊なんかになる時に役に立つ。いろいろな事を知っていて損はないさ!そのおかげで俺もこうしてこのクラスで担任やれてる。」

先生はまっすぐな目でそう言った。

人生では何が必要になるか分からない。その必要になった時に持っていないよりは、必要にならないかもしれなくても、選べるものを増やして置いたほうがいい。

(理屈じゃわかるけど、戦うようなことをするつもりもないしなー。喧嘩だってしたかねーのに。)


能力には本当に様々な者がある。強いものなら炎を自在に操ったり、弱いものでは少し身体能力を上げられるだけの物もある。

それは本当にただの贈りギフトで、選べる物では無く、それぞれが与えられた能力を日々伸ばす努力をしている。

そんな中でもとりわけ強力だったり珍しかったりする能力が集められてるのがここAクラスだ。

俺の班員たちもそれぞれ特異な能力を持っている。

まず俺の数少ない友達の1人、仁。

仁は水分を氷にする能力を持っている。大気中の水分も変質させられる事からAクラスに選ばれた。

殺傷能力が無駄に高いが、いろいろと応用も利く便利な能力だ。

次に凛。

凛はテレポーテーションができる。

移動できるのは目に見える範囲、または強く想像できる場所に限るが、瞬時に移動する事ができる。

自身はもちろん、自身の触れている物も同時に移動させる事ができる。

どこでもなんちゃらいらず。

最後に七瀬。

七瀬はサイコキネシスによって触れずにものを動かせる。

初めて発見されたようなチャチな奴ではなく、自分の体重の何倍もある物を動かしたりもできる。

ただ、動かすものの重さや大きさにやって消耗する体力も大きくなるし、限界はある。

圧力をかけて潰したりもできる。

これが実力でAクラスに選ばれてる人たちの力だ。

かく言う俺は…

「都築、俺が考えてる事わかるか?」

「昼飯はカレーうどん。」

これが俺の能力。でもテレパシーとはちょっと違う。

「他には?」

「何度も言ってるけど、俺にはそんな多くのことは見えないよ。せいぜいあとは春香先生が好きとかそんなことくらい。」

「お、お、お、おまえ!…そんなこと大きな声で言うんじゃない!」

俺の能力は相手の思ってる事が見える能力。考えを読み取れる訳じゃなくて、あくまで見えるだけで、そこから先は自分で考えなきゃいけない。

正直超不便。素直に相手の考えてる事が分かるほうが楽だ。

「おまえは本当によく分からない奴だなー。なぜ今考えている戦闘訓練の内容ではなく、春香先生の事を…」

「だから、俺は心に思ってる事を形として見れるだけなんだよ。相手が集中してなきゃ形にならないし、いろいろ形にするのは大変なんだよ。」

そう。たったこれだけの能力。

テレパシー系の能力は悪用もしやすい事から高レートの能力として扱われる事が多く、それに類似している俺の能力も、テレパシー系として判断されて強制Aクラスだ。

実際は他のテレパシー能力とはかけ離れて使いにくいしめんどくさいしいい事ない。

いい点といえば、潜在意識に強くあれば、それを形にすることができる程度か。

こんなんで入学以来全然進歩ないから、能力強化の時間は大体こうやって先生を使って遊んでいる。

どう考えても落ちこぼれのはずなのに、過大評価でこのありさまである。

本当…地獄だよ…

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強さってなんですかね? ゆっち @yutti0727

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