第2.5話 未だ知り得ぬ記憶

此処は__何処だろう。

私は__


私の頭に突然浮かび上がり、鮮明に書き起こされる謎の………記憶?……どう言葉にすればいいのか私には分からないが、突然頭の中に、一節の[会話の記憶]が書き起こされた。


忘れていたものを、突如鮮明に、隅から隅まで[思い出した]。

そんな感じがした。


学習過程をすっ飛ばして、成果を得た。


そう言った感覚に近い。


この記憶は………?


私の中に入ってきた情報は、まだ欠けることなく頭に染み付いている。




「どーせなんも得られないって……これ以上。諦めたら?」


発足めいた跳ね方をしている、長く赤黒い頭髪を頭頂部に纏め二つに結び下げ、それを首後ろで更に一つに纏め下ろし、白と灰色に 黄色く縁取られた青いボタンの上着に合わせ 黄色く縁取られ白を基調とした奇抜なデザインの大きな装飾品が下半身を覆うように取り付けられた青黒いジーンズの、目つきは悪い が何処か揺るがぬ自身を感じさせる高身長 で顔が相当に整った青年………これ程までに、特徴を挙げればキリがないが、とにかくそれは、赤髪の青年に宛てた言葉だった。


言葉の主は透き通る様な色をした青髪である。上には青い巫女装束を身に纏い、下には革のズボン。伸びに伸びた長髪の先を床すれすれに結んでいる、これまた奇怪な格好をした、中性的な顔立ちをした男性。何方かと言えば女性寄りの顔立ちで、本人の性別とは裏腹に、すらりとしていて[美しい]。

こちらも異端な容姿。特徴にまみれている。男性とは言い難いことも含め、である。


「…………」


赤髪は勿体ぶって、ようやく言葉を発する。


「………組織の例の娘が…向かったそうだ。……蒼氷ノ獄に。」


赤髪が、青髪の方へ振り向く。

青髪は驚きを隠せずいて、目を見開いて赤髪に言葉を返す。


「蒼氷ノ獄!? あの子が!? …………くくっ、ふヒヒヒ…そうかい、成程。成程。__知らなずに向かったなら兎も角、それが有り得ないもんね、あの子は。」


楽しそうに、不気味に、青髪は嗤った。


「僕らの仕事がバレちゃってるもん。………さて、どうするよ、リグ。[あの馬鹿げた力の魔神]に、僕らは対抗出来る?」


名前を呼ばれ、問い掛けられた赤髪、もといリグは、溜め息を吐き、再び青髪に背を向けて、ぶつぶつと問い掛けの内容について考える。


「…………あの糞ガキ、魔神を手中になんざ……魔神が起きりゃァ組織が出向く。組織がアレにぶつかりゃまず敵わない………アー………」


リグはすぐに、青髪に振り向いた。


「……お引き取り願おう。それが最良、いいな?エクサ。」


巫女装束の裾に手を入れ首を鳴らしていた青髪、もといエクサは言う。


「んー……と、ごめん。どうやって?」


「どうやってッてなァ……」


「あの子は僕らのしてることを知ってるんだよ?僕らが直接干渉しない方法でそれが出来ればいいけど、それが無理でしょ。記憶修正だとか、出来るの?」


リグは苛立ちを見せて、舌を鳴らした。


「………ほんと、余計なことしたねェ………じゃあそうだ、魔神をオレらが叩こう。………結局抵抗だが………まァ、時間稼いだらまた、封じ込めればいい。そこは、任せた。」


「はいよぅ。」


エクサは余裕綽々な表情で返し、伸びをする。


「………蒼氷ノ獄は……ネヴェンパの領域か。ネヴェンパにも協力を得られれば、アイツは強い。上手く行きゃ魔神の降臨をそもそも阻止出来るかもしれねェ。まァ、なんだ。アイツも縄張りを荒らされンのは困るだろうし、第一あんなモンが出て来ちゃ各々の聖者さんが黙ッちゃ居ねェよ。」


「………まーそうだね、最悪、それだ。聖者が顔出せば僕達はまず豚箱行きだろうけど、それが確実かも知れないし。………と。」


エクサは何か異変を感じて、リグの上方に視線を向ける。

それに気が付いたリグも首を上に向け、[何かに語りかける]。


「?どうした、エクサ………あーあーあー……テメェ、随分とまァ、命知らずだねェ。」


私の新しい記憶はこれで終わり。会話とタイミング良く、まるで映画の演出の様に、ぷつりと途絶えた。こんなに鮮明に浮かんだのに、ちょうどここから先はまるっきり闇の中。


もう一度思い返そうとすると、思い出そうと試みた場面から欠けていき、最後には一連に関する記憶すらも消えていた。


今から数年前の冥界で、緑髪の少女が体験した出来事だった。

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Desire of the nether world 千歳巫女 @gurensouhi

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