お話の中心は邪馬台国で卑弥呼の跡継ぎとなった、壹與(トヨ)ちゃんが主人公です。最初は跡継ぎとして活躍するストーリーが続くのかと思っていましたが、トヨちゃんの世界観が少しずつ広がっていきます。何より前向きに取り組む姿は、現代人の私たちに置き換えても違和感がないほど、彼女の行動や言動にはリアリティがあります。
邪馬台国が舞台となっているため、弥生時代に関する言葉や歴史などが数多く登場します。古代史や神話などに興味があれば、この作品の世界観をより深く知ることが出来ます。
これらについてあまり詳しくない人でも、スラスラとお話の内容が頭に入ってくるので問題ないと思います。歴史小説でありながら登場人物も多くないため、頭が混乱してしまうという事態になることもありません。
歴史の参考書のように分かりやすく書かれているだけでなく、作者さま独自の世界観も魅力の一つだと私は思いました。
日本の古代史上のスーパーヒロイン、卑弥呼の後を継いだトヨ(壹與)ちゃんのお話です。
トヨちゃんは、最新トレンドである「文字」にめっちゃ興味津々な美少女。
魏志倭人伝でもおなじみの張政や難升米も巻き込んで、今日も今日とて巫女として閉じ込められた社の中でお勉強に励みます。
古より伝えられた謡や宣託を伝えつつ、文字を通じて様々な事を時に可愛らしく、時にお馬鹿に「学んで」いくトヨちゃんがとてもキュートです。
そして、このお話は、「ことば」や「文字」をきっかけに、本当にいろいろなテーマへと触れて行きます。文字のなりたちや意味、日本や中国の古代史、諍いや正義、そして「伝える事」の意味や姿勢と「覚える事」との違い。そして何よりトヨちゃんのキュートさ。
読み始めは、「あ、古代史をなぞって紹介する系かな」と思うかもしれませんが、実は古代史を下敷きにいろいろなテーマへの扉を開いてくれる素敵なお話です。
トヨちゃんや周りのキャラクター達も単なるガイドに留まらず、生き生きとしています。
それにしても、古代史に限らず、伝えられた情報を元にした穴埋め・妄想・お話作りって、本当に楽しい!と再認識させていただきました。
そんなお話作りを楽しんでいる様子も伝わってくるお話です。是非ご一読を。