episode:少女の願い

「お願い、彼を。」



艶やかなポニーテールの黒髪を白い地面に擦り付ける勢いで、地面にひれ伏した。


何もかもない白い空間の中。


絶壁の胸の少女は祈りを捧げた。


レンを救って。」


泣きはらした少女は、少年をただ思い、それだけを望んだ。


「ねぇ、貴女。いえ、アカリちゃんね。それを何故望む?」



まるで、何重にも響いて降り注ぐ声は、優しげだったと燈は思った。

ただ、彼の死を受け止める事は出来なかった。

何故って決まっている。


燈は、彼を好きだ。

彼は覚えていないかもしれない。

あの夏の間の事を。

幼少期にも会っていた。

再び、出会った彼は覚えていない。

だけど、彼はそう思っていなくても、私を救ってくれた事は私は覚えている。



「彼は貴女の事は1ミリたりとも気にしてなくても?望む?」

「ええ。それでも、蓮を救って!」

「………ほんと、あの子にはもったいないくらいの子だわ。」



柔らかな日差しが、白い空間に降り注ぐ。



「燈ちゃんは好きで、好きでどうしようもないのね。」

「うん!この思いが報われなくても。でも!次があったら、私はアタックしまくるわ。」



ニカッと笑って燈は天を見上げる。


「……チャンスをあげるわ。貴女は、虐められていた少女を無償で自分が代わりに虐められても救っていたから。」

「カモメちゃんの事?」

「ええ。彼女、華有芽カモメさんは転生しているわ。唯一、貴女と両親に感謝と謝罪をしながらね。」

「そうなの?やっぱり、自殺したんだ。」

「今は、立派に生きているわ。一人の女としてね。おっちょこちょいな所も憎まれながらも、働いているわ。」


キラキラと日差しは強く輝き出している。


「燈ちゃん、チャンスとは別にユニークスキルを1つ削除する代わりに天命を授けるわ。【コード入力】aqj'atd'a'@g.nj'¥2$trwuja2789」

「なんて言っているの?わからない」

「ふふ。1つ、蓮君を射止めなさい。結婚すれば良い。未来の彼を救う事に繋がるわ。彼が助かる道を選択したらね。これ以上は言えないわ。アイツから妨害されそうだからね。」

「ん?ということは今までと変わらないよね?うん、大丈夫!」


燈は、ただ彼に会えるかもしれないと言う事を思った。


あの垣間見た未来は決して、現実にしてはいけない。


蓮が手放す選択をしなければ、どの道を選択しても、蓮は絶対死が訪れる。


あの光景は忘れてはいけない。


あの凄まじい戦いの場面を。


選択は後悔してはいけない。


私は彼を救う為に生きる。

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