2章ー6・惑星レムリア
「どうしよう」
途方に暮れて呟く。
やって来ました。惑星レムリア。
今、あたしがいる場所はレムリアにある3つの主要大陸の内の1つ・アトランティス。惑星レムリアには西パンゲアと東パンゲアという2つの巨大な大陸があり、西と東の両パンゲアは北極側で地続きで繋がっている。
アトランティス大陸はその西と東のパンゲア大陸の間にある大海洋のちょうど真ん中ら辺に浮かぶ大陸で、その大きさは地球のオーストラリア大陸の2倍くらいだと思う。
このアトランティス大陸には5つの国があり、その5つの国の中でも一番大きな国がバルト帝国。このバルト帝国の中に
そして、あたしが立っている場所は見渡す限りの砂、砂、砂・・・・・・。
遙か地平線の彼方まで辺り一面が砂だらけの大砂漠地帯だった。
ベステトの知識と能力の一部を把握できるおかげで、自分がどこに居るのか分かるのがせめてもの救いだけれど、本物のベステトではなくベステトの無念が形になっているだけの今の偽ベステトの体じゃ、ラーの目という神の能力もどうしようもなくしょぼい。
でも、しょぼいと言ってもこの異世界にある
バルト帝国はアトランティス大陸の中央に版図を構える人族最大の国家で、その西側南部に国境を接しているサウス・セリアンスロープと呼ばれる国が、あたしが居る国。
サウス・セリアンスロープは色々な種類の獣人達が協力して統治している合衆国だ。サウス・セリアンスロープの北にはノウス・セリアンスロープという別種の獣人達が統治する国があり、どちらも獣人達が統治する国なのにお互いの仲はとっても悪い。
2つの獣人の国の仲が悪いのは、サウス・セリアンスロープの獣人が哺乳類系、鳥類系なのに対して、ノウス・セリアンスロープの獣人は爬虫類系、両生類系でお互いの種族の系統が遠すぎるせいだと思う。
同種族であるはずの人間でさえ肌の色や文化、宗教の違いだけで憎み争うからね。まして、種そのものが遠ければ生態系や本能の違いからくる価値観や感情のずれは半端ないんじゃないかな。
ただの野生動物なら種が違っても仲良く共生できる事があるけれど、獣人は人間と同等の知恵を持っているから難しいよね。知恵は人を進歩させてくれるから、絶対に必要で大切なものだけど。
でも同時に知恵は際限のない貪欲な欲望を生み出す元。食欲、睡眠欲、性欲、安全欲、社会的欲求の5大欲求だけでは飽き足らず、それ以上の破格の欲望を望み渇望してしまう。
欲望は生きる源泉だし、どんどん高望みはして良いと思う。でもそれは同時に世界に悲しみや憎しみ、蔑みや残虐を生み、殺戮や差別。富と貧困をまき散らしてしまうという事も理解していないと、いつか人類は自らの手によって足元を掬われてしまう事に必ずなる。
ま、そんなベステトの世界観はどうでもいい。今はこの見渡す限りの砂漠から脱出しないと。
「ベステト。ねえ、ベステト」
異世界に来てからずっと呼びかけているのだけれども、胸に張付いている宝石に化けたベステトは沈黙したまま。
自分の肉体を失ってあたしがベステトの体を乗っ取ってからは、2人の意識が目覚めていると神力の消費が増えるので、ベステト本人が気を使って意識を閉じてくれているのは知っているけれど。
あたしよりベステトの方が絶対上手く異世界でやっていけると思うんだよね。何でそうしないかな?
こいつ。絶対あたしに余計な気を使っている。
あたしの体はペチャンコに潰れて、事実上は死んだままだ。
回廊を通るためだったとはいえ。そして自分が手にかけたわけではないとはいえ。結果的にあたしを死なせた事に負い目を感じているんだ、この馬鹿は。
もう、済んだ事だよ。死んじゃったものは仕方ないじゃん。
こうして今はベステトの体があるお陰で生きていられるわけだし。
ここは少しでも早く江梨花という人を救い出すためにも効率性重視でいこうよ。ね、ベステト。
いくら呼びかけても返事が無い。
こいつ、本当に頑固だな。いい加減にしなよね、ベステト。
あっ!でも、あたしの性格と同じだから、あたしもこいつと同じで頑固なのか。
なんかやだなあ。反省しょう。
呼びかけても答えてくれないので、仕方なく自分で出来る事を考える。
まずは、自分の現状把握からだね。
「ステータスオープン」
セリカ
種族・ネコ科獣人?
レベル・1。
魔力・0
体力・9900。
速さ・9990。
力 ・9500。
目視・レベルMAX。
俊足・レベルMAX。
跳躍・レベル81。
爪撃・レベル73。
牙撃・レベル69。
金毛防御・レベル62。
特記事項・解析不能なシステム外の未知の能力を所持。
ふーん。
ステータス画面の種族欄がネコ科獣人の後に?マークが付いてる。
あたしの正体が分からないんだろうね。間違えているし。
そもそも獣人じゃないし。猫は猫でも獣人じゃなくて神だし。
基礎レベルは最低の1だね。魔力なんか0だって。笑える。
でもそれ以外の身体能力はベステトの体だから、やっぱり飛び抜けているね。
この世界の人間は高レベルで強い奴でさえ、体力や速さ、力なんかは2000もあったら英雄級らしいし。種族的に身体能力の高い獣人でさえ、3000もあったら怪物呼ばわりされるみたい。
特記事項の解析不能なシステム外の未知の能力というのは、あれだ。
残留思念とはいえ神だから、神力の事だね。
この世界の物理法則とシステムに縛られない外来の力だから解析もできない。
たぶん、ベステトの神力やその性能、エネルギーなんかも自分だけの分析システムを作れば数値化して簡単に見られるようになるのだろうけれど。あたしの頭と今知っているベステトからもらった知識だけじゃ無理。
そっちはベステトの意識が目覚めた時にでも頼んで作ってもらおう。
とりあえず、サウス・セリアンスロープのこの砂漠を抜け出さないと。
向かうならやっぱり、江梨花という人の前世であるエリカさんが住んでいたバルト帝国内にある教会だよね。そうすると、東に進まないといけない。ここから砂漠を抜けるだけでも距離は670km。地球で言ったら東京からスタートして大阪を抜けてさらに広島まで走らないと砂漠を出られない。
そこからサウス・セリアンスロープとバルト帝国の国境線まで行くのに約390km。
さらにそこからバルト帝国内のエリカさんの教会まで1340km。
直線にして合計・2400kmもの長い道のりです。
直線で進んで2400kmだから、実走距離はまだまだ長くなるよね。
何だか気が遠くなってきたよ。
でも心配はしてないもんね。
基礎レベルこそ1だけど、体力9900。速さ9990。力9500のチート身体能力がわたしにはあるんだから。
本気で走れば音速くらい余裕で超えられるはず。
助走をつけて。さあ。行ってみよう!
足の回転は音速を超えた。砂漠の大地に第一歩目をつける。
その瞬間、大量の砂の山が数百メートルにも及ぶ高さにまで巻き上げられた。
足の回転速度はさらに増す。巻き上げられる莫大な量の砂は3kmを超す高さで天に舞い、巨大な爆音が轟いた。
そして、あたしは150メートルも前進していなかった。
前進する代わりに進行方向側に弧を描くような形で約30メートル近い深さのクレーターを作って、その中に埋もれているだけだった。
「駄目。あたしの走るパワーを大地が受け止めきれない」
舞い散る大量の土砂に埋もれながら、肩が抜けるかと思うくらいにあたしはがっかりした。
神様の作り方 花凜香 @akamamu
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