第12話 VSオーク
目を開けると、体が浮き上がっていくのがわかる
あの精霊の言ったことは正しかったようで安心した。正しくなかったら...そのときはそのときだな。
でだ。気になる点がある。
昨日はすごく冷静だった気がする。いつもの俺なら結構テンパってただろうけど、すごく冷静だった。しかも筋肉痛とか酔いが全くなかった。
......あの老人が俺に飲ませた水の効果か?それ以外に考えれない。ただの酸っぱい水をあの意味深な老人が飲ませるわけがないし。
んー。取り敢えず今日は俺の能力を図るらしい。学校でやってた新体力テストみたいなやつなのかな。それとも魔物と戦うのかな。後者の方がありそうだな。
ここでチート発動で俺TUEEE展開になるのかもしれない。
考えてみてほしい。この異世界にきて、気絶、気絶、気絶。気を失って、目が覚めたら全く知らないところにいて、、、。思ってたやつと違うよな。
後に俺TUEEEになることを目標に今は老人に従おう。
そろそろ地上だ。
新鮮な空気を吸うとともにガンガンと音が聞こえる。
「なんですか、あれ」
「あれはオークというやつじゃ」
3m以上ある人型の猪。オークといえば、脂肪がたっぷりついてるイメージがあるが、このオークは腹筋バッキバキで二本の剣で見えない壁を切りつけている。あの壁は魔法障壁というやつなんだろう。
そしてめっちゃ顔が怖い。鬼の形相とは正しくこのことだろ。オークっていえば猪とか豚とか鬼という系統に入りそうだから強ち間違いじゃないはず。
「早速あなたにはこれを着てもらいます」
精霊から受け取った防具を着る。
袖を通すだけで楽に着れた。
革でできており、そこまで重くない。
靴、革でできていると思われるブーツを履くと体全体が軽くなったように感じられる。
付与効果というやつなのだろうか。
「これを付けてください」
見るからに高価そうな腕輪を渡され、言われるがまま身に着ける。
「この見るからに高価そうな腕輪はどんな効果があるんですか?」
「この腕輪はですね。斬撃攻撃無効という効果がついてます。切られても切れ傷はつきません」
え。なにそれチートじゃん。糞強いじゃん。あのオークが持ってる剣の攻撃を生身で受けても、切られないんでしょ?ノックバックはあるだろうけど、剣とか怖がらなくていいじゃん。言い換えるなら、あのオークが持っている剣は木剣と変わらないってことだよな。それ以上には硬いとは思うが。
だが、よく考えてみると、そんなぬるくはないはず...。一瞬頭の中に飛天〇剣流という単語が浮かぶが、こんな見るからに野蛮で人間でもないオークがそんな架空の剣術を使えるわけがない。...よね。しかも、そもそも二刀流だし。
「準備万端じゃな!では、始め!」
老人がそう言ったと同時に魔法障壁が消える。
え、武器ないの?もしかしてハンデ?リーチ的に勝てる気が全くしない。これっぽっちも。一瞬で懐に入って、殴るってひるませるぐらいの身体能力はないから無理だ。感覚的に無理だといってる気がする。
「ウォォォォォォォォォ」
「あぁ、ただのキチガイか。いきなり吠えるとかイキってんの?そうなのか?イキってんのか?」
思わず、口に出してしまった。だって、うるさいんだもん。すごく、鼓膜に響いた。
はぁと息を吸い込むと同時にオークの雰囲気がガラッと変わる。
殺気というもの直に受け、腰を抜かしそうになる。
オークに威圧され、一歩後ろに足が下がる。
怒らせてしまったらしい。とかいう楽観的な発想はなく、ただただ、恐い。
口が滑ってしまった過去の自分を憎みながら後退りしてしまう。
打開策なんて考える余裕なんてなかった。
オークが一歩、一歩足を進めるごとに一歩一歩後ろへと下がってしまう。
そして、オークが走り出す。
恐怖から解かれ、体がいうことを聞いたのは剣を振り下ろされる寸前だった。咄嗟に両腕をクロスさせ、受ける。剣で薙ぎ飛ばさせれる。
湖の上を転がりながらできる限り勢いを殺す。
「オーク行くぞ!
左の瞳が熱くなる。前回使った時とは違うが、気にせず自身に付与していく。
脚力強化 腕力強化 耐性強化 動体視力強化 直感強化 移動速度強化
瞬間速度強化 跳躍強化 体力回復強化
すぅぅと息を吸う。はぁぁと息を吐く。
息を全て吐くと同時に体全体に力を入れ、駆け出す。
オークもそれに備えてか、持っている剣が光りだす。
何かの必殺技だろう。だが、当たらなければどうということはない。素なら絶対に不可能だが、付与されている状態ならできる。
オークが剣を振り下ろす前に懐に入る。
瞬間右足強化
ほんのりと右足が光る。
左足で跳躍。右足であれを思いっきり蹴る。
「秘技!金玉キィィィック!」
跳躍の効果も合わさり、オークの玉に会心の一撃が入る。
オークは武器を手放し、後退り、両手で押さえながら膝をつく。
「グゥォォ」
弱々しく唸る。
握力強化 指力強化
「からの追い打ち目潰しぃぃ」
手の大きさ的に片目しか無理なので、左の眼に思いっきり指をぶっさす。
両手で押さえているオークは防御するすべなく片目をつぶされる。
結構グロかったが、切羽詰まって安心しきれてない俺にはグロさなんかには見向きもせず先を考える。
「ウガァァァ」
左眼の痛みで後ろから倒れる。
両手で左眼を押さえる。
それを狙って軽く飛び、体を一回転、着地時に思いっきり足で水面を蹴り、飛び、一回転し、その勢いのまま踵であれをつぶす。
「金玉一回転踵落としぃぃぃぃ」
一回転した勢いを全く殺さず、オークの玉をつぶす。二度目の会心の一撃であまりの痛みで、飛び上がる。
そのまま距離をとる。
逃がさまいと距離を詰めるが、勢いに任せて詰めたせいか、避けることができず膝蹴りを顔面に受ける。
飛ばされるが、受け身をとり、態勢を立て直す。
受け身をとれたのはいいが、鼻血がでてくる。
軽く手で拭くが、全然止まらない。
動きを止めたオークから赤いオーラのようなゴワゴワしたものが溢れ出す。禍々しいオーラが一体を飲み込む。
「これを使ってください」
精霊が投げてきた物を受け取る。
「これは、刀?」
知らずのうちにオークが剣を手にしている。
突然直感が危険信号をだす。
直感の通りに後ろに飛ぶ。先程いたところに剣が突き刺さる。水に沈まず、突き刺さる剣光景は非常に珍しいが、そんなことを見るほど余裕はなかった。
身の危険が迫っているのを察してか分からないが鼻血が止まった。
精霊から受け取った刀を抜く。
一時的刀剣術会得
長年使ってきたような親しい感じがする。
深く呼吸し息を整え刀を構える。
その姿は幼いながらいくつもの修羅場を潜ってきたかのように洗練されていた。
オークが踏み込む。
赤いオーラが出ているせいか、前のオークとは比べられないほど速い。
オークが剣を勢いに任せて振り下ろす。
それを受けもせず、避け、両手首のスナップだけで、オークを切った。
ゴッドエンチャンター 仏田 八兵衛 @hatyibei
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